「NieR Replicant ver.1.22474487139...」発売前に,原点であるレプリカント/ゲシュタルトの魅力を振り返る
スクウェア・エニックスは,「NieR Replicant ver.1.22474487139...」(PS4/Xbox One)を2021年4月22日に発売する(PC版は4月24日発売)。
本作は,「ニーア レプリカント」(以下,レプリカント)のバージョンアップ版として,60fps描画への対応や新要素の追加などが行われたタイトルだ。「ニーア」シリーズというと,大ヒットした「NieR:Automata」や(PC/PS4/Xbox One),2月にサービスが開始された「NieR Re[in]carnation」(iOS/Android)から入った人も多いと思うが,もともとはレプリカントからシリーズが始まっている。
本稿では,そんなシリーズ第一作の魅力を振り返っていきたい。これからバージョンアップ版を遊ぶ人に向けて,ネタバレには配慮しているが,ある程度の紹介はご了承いただきたい。
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「ニーア」シリーズがスタートしたのは2010年4月22日のこと。PlayStation 3用ソフトのレプリカントと,Xbox 360用ソフトの「ニーア ゲシュタルト」(以下,ゲシュタルト)という,2タイトルでのマルチ展開だった。タイトル名が違うのにマルチ展開というのも不思議に思うかもしれないが,基本的な内容はどちらも同じだ。
違いは主人公とヨナの関係性であり,レプリカントは兄と妹の物語,ゲシュタルトは父と娘の物語となっていた。そのため,どちらをプレイするかでイベントから受ける印象は少し変わってくる。
4月22日に発売される「NieR Replicant ver.1.22474487139…」は,そのタイトルどおりレプリカント(兄と妹の物語)のバージョンアップ版だ。
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ディレクターのヨコオタロウ氏は,非常にダークかつ癖の強いアクションRPG「ドラッグ オン ドラグーン」シリーズを手がけた人物である。レプリカント/ゲシュタルトは,「ドラッグ オン ドラグーン」の中でも特に後味が悪い“とあるエンディング”と共通の世界観を持つため,「ニーア」シリーズの原点を辿ると「ドラッグ オン ドラグーン」まで遡る。
とはいえ,作中の時代はまったく違っており,ストーリーがつながっているわけでもないので,あくまで別シリーズという理解でいい。
物語を彩る,魅力的な人々
レプリカント/ゲシュタルトの舞台は,人々が「マモノ」という謎の敵に脅かされる世界だ。主人公は,レプリカントではヨナの兄,ゲシュタルトでは父親。立場こそ違えど,目的は「妹(娘)のヨナを苦しめる『黒文病』の治療法を見つけたい」と同じである。黒文病は恐ろしい病で,主人公が治療法を見つけないとヨナは確実に死んでしまう。
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![]() 主人公の妹/娘であるヨナ | ![]() 黒文病に罹ると,身体に文字を思わせる紋様が浮かび上がる。確実に命を失う恐ろしい病だ |
筆者は両作をプレイしているが,個人的にはレプリカントのほうが印象深い。ゲーム中,時間の経過で主人公が少年から青年へと成長するからだ。少年期の主人公は「片手剣」の武器しか使えないが,ヨナを救うため,がむしゃらに突き進んでいく。真っ直ぐな心が人々を揺り動かす,青臭くて清々しい少年であり,思わず応援したくなってしまう。
そして主人公は,とあるできごとの後で青年となる。逞しい体躯で「両手剣」や「槍」を振るってマモノどもを狩る様は頼もしい限りだが,その心は焦りと怒りで暗く沈んでいる。少年期の温和さは陰を潜め,マモノへの憎しみを燃やし,無謀な戦いに身を投じるようになってしまった。ゲームを進めていくと,危ういままに突っ走る青年主人公から目を離せなくなっている自分に気づくはずだ。
ちなみに,ゲシュタルトの主人公は最初から中年男性なので,時間が経っても覆面をするくらいで姿はあまり変わらない。
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主人公の妹(娘)のヨナは,治療不可能な黒文病に冒されてしまい,容態もどんどん悪くなっていくばかりという悲劇の少女だ。しかし,彼女が心配するのは自分ではなく主人公のことばかり。ロード中にはヨナの本音が書かれた日記を見ることができるのだが,その内容も主人公に会いたい,手料理を食べさせたい,一緒にいてほしい……といじらしいものばかり。「こんな良い子が,なぜ病に苦しまなければならないのか」とプレイヤーの気持ちはいつしか主人公とシンクロする。「彼女は救われるのだろうか?」「彼女が幸せに笑う姿を見たい」と願いつつプレイするようになるのだ。
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主人公が旅の中で出会う,カイネやエミール,白の書といった仲間たちも魅力的で,つい物語の先を見たくなる。
女戦士のカイネは,見た目の美しさと,口を開けば飛び出す罵詈雑言(修正音入り)のギャップが強烈。戦いとなれば,両手にノコギリのような剣を持ち,縦横無尽に暴れ回るのだから頼もしいことこの上ない。カイネの言動にはもちろん理由があるのだが,そんな彼女が主人公との旅でどのように変わっていくのか。そして,ぶっきらぼうな態度の陰に何が隠されているのか,彼女から目が離せなない。
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草原に建つ洋館の中,忠実な執事に守られる美少年がエミールだ。礼儀正しい物腰と周囲を気遣う優しさと儚げな雰囲気は,荒廃した世界にはそぐわない。
しかし,洋館で暮らす理由は,贅沢を楽しむためなどではない。見たものを石に変える目を持つため,自分を隔離しているのだ。本来は伸び伸びと駆け回るべき年頃の少年にとっては,あまりにも過酷な運命。しかし,エミールは世を恨むどころか,周囲に迷惑を掛けることばかりを心配しているのだ。
そんなエミールは,とある事情で洋館を訪れた主人公やカイネと行動を共にすることになる。呪いの目に怯え,希望もないままにひっそりと暮らしてきたエミールが,やっと主人公やカイネという理解者に出会えた。その後の彼がどのように生きていくのかは,ぜひゲームの中で確認してほしい。
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![]() その力ゆえに,エミールは自らを隔離して日々を過ごす | ![]() 自らの力を恐れるエミールが,その目を開く。果たして何が起こったのだろうか? |
主人公とともに旅するのは人間ばかりではない。その傍らにある「白の書」は,道具ではなく立派な仲間。いかめしい名前や,時折披露する深い知恵,物理法則を無視してフワフワと浮かぶ姿からは,この世の全てを睥睨する超然とした存在であるかのような印象を受ける。しかし彼は,自分が存在する理由や世界のありようなど,肝心なところを忘れてしまっている。主人公に付けられた「シロ」という名前を愚痴り,カイネと言い合いする様は,まるで口うるさい老人のようで,俗っぽさと同時に親しみが感じられる。
しかしながら,白の書が果たす役割は大きい。主人公が魔法を使えたり,倒したマモノから手に入れた「ワード」で武器や魔法をパワーアップできたり,ステータス画面で能力値をチェックできたりするのも白の書があってこそ。主人公の旅には欠かせない仲間なのだ。長い眠りから主人公に目覚めさせられた白の書は,皆との触れあいで少しずつ変わっていく。そして,自らの存在意義を知り,ある重大な選択を迫られる。白の書がどんな答えを出すのかは,旅の行く末で明らかになることだろう。
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![]() その言葉からは,深い知恵を持っていることが分かる。果たして何者なのだろうか? | ![]() かと思えば,口うるさい老人のようなところもある。特にカイネとは仲が悪く,何かというとケンカをする |
謎めいた物語が,プレイヤーの心を惹きつける
レプリカントとゲシュタルトの大きな魅力は,謎めいた物語だ。ゲームの冒頭,主人公とヨナがいるのは2053年の廃墟で,2人のほかには人っ子一人いない。果たして世界に何が起こったのだろうか。
そこで主人公はとある事件に遭遇し,次に中世めいた世界で目覚める。そこは迷信深い人々が集落を作り,不気味なマモノや暴走したロボットに怯えて暮らす,過去か未来かも分からない場所だ。2つの世界に共通するのは,マモノが人々を襲っていること,そして主人公の傍らに1冊の話す書物があること。2053年の廃墟と,中世のような世界はどのような関係にあるのだろうか。
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![]() 主人公はヨナを守るべく,マモノと戦う | ![]() 主人公の傍らには,話す書物がある |
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ロード中に,ヨナの日記が見られるのは前述した通り。「今度のロードでは,ヨナのどんな日記が読めるだろう」と楽しみにしていると,時折不気味な黒いページが混じる。そこには硬い文体で技術的な単語が並んでいる。とてもヨナが書いたものとは思えず,別の時代か文明が混線してきたかのようだ。黒いページは何を伝えようとしているのだろうか。
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敵であるマモノたちも不可思議な存在だ。黒い人影のような姿をしており,陽光を浴びると消えてしまう。当初は散発的に人々を襲っていたが,いつしか寄せ集めの防具で陽光から身を守るようになり,組織立った戦いを挑んでくるようになる。その振る舞いは,まるで知性があるかのようだ。一体どのような存在なのだろう。
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こうした謎は,ゲームを繰り返し遊ぶことで少しずつ明らかになっていく。その行きつく先に何が待つのかは本稿では語らないが,最後までプレイしたのなら,おそらく本作に特別な思い入れを抱くことになるだろう。
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血しぶき飛び散る迫力のバトル
アクションRPGとしての楽しさも見どころだ。主人公は,片手剣,両手剣,槍,そして魔法で戦っていく。群がるたくさんのマモノをなぎ払うと血しぶきが飛び散る様は,恐ろしいと同時にビデオゲームらしい爽快さがある。
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こうしたバトルを彩るのが,本作独特の「ワード」システムだ。マモノを倒すと,さまざまなワード(修飾語)が手に入り,これを武器や魔法の前や後ろに付けることで,特性を与えられる。例えば「鉄塊」という両手剣に,武器攻撃力を上げる効果を持つ「呪の」と,アイテムドロップ率を上げる「の満ち足りた鎮魂歌」というワードを付けると「呪の鉄塊の満ち足りた鎮魂歌」となり,攻撃力が上がるうえにアイテムが手に入りやすくなる。
また,防具を着けたマモノが出てきた場合に,アーマーブレイク攻撃力アップの「第七の原罪の」と攻撃を当てるとHPを吸収する「ハ,数奇ナ運命ヲ辿ル」を付けて「第七の原罪の鉄塊ハ,数奇ナ運命ヲ辿ル」とすれば,防具を砕きやすくすると同時にHPも回復できる。状況に応じて,その場で武器や魔法のカスタマイズが可能だ。
ワードも「音楽を愛するロバと」「煉獄の理と」「が,首と胴を切り離す」「の喜劇のトレモロ」「と類い稀なる無知な王」など,厨二病なセンスが炸裂しているため,効果よりも言葉としての意味や響きを優先してワードを組み合わせてみるのも面白いだろう。
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一筋縄ではいかない物語とシステムが,手のひらの上で踊らされているような感覚をもたらす
本作は,物語もシステムも一筋縄ではいかない。主人公は出会った人々からクエストを受けられ,その内容は「誰かに何かを届けてほしい」とか,「何かを買ってきてほしい」といったお使いが多いが,「ああ,RPGのお約束な感じね」なんて思っていると,どす黒い結末を迎えたりして驚かされる。
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ジャンル的にはアクションRPGだが,いきなりノベルゲームが始まったり,マモノが弾幕シューティングもかくやという大量の弾を撃ってきたり,海外ゲームでお馴染みのツインスティックシューター風になったり,洋館を探索するシーンでは,とある“洋館モノのサバイバルホラー”風にカメラが固定されてラジコン操作になったりもする。クリエイターの手のひらの上で踊らされているようで,なかなかに不思議な体験だ。
こうした物語やシステムでの工夫はヨコオタロウ氏らしい部分で,ゲシュタルトとレプリカントの後に発売された「ニーア オートマタ」はもちろんのこと,過去作「ドラッグ オン ドラグーン」でも同じ傾向が見られる。遡って遊んでみるのも良いだろう。
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![]() このシーンでは見下ろし画面になり,右スティックで弾の発射方向を制御する | ![]() 場所によっては,見下ろし画面のハックアンドスラッシュRPG風の画面になることも |
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ゲシュタルトとレプリカントは,これまで紹介してきたことから分かるように,クセの強いタイトルだ。しかし,これが刺さる人にとって,たまらない魅力があるのも間違いない。そして,この記事を開いている時点で,おそらくその“刺さる人”にあなたも該当するだろう。もし当時プレイしていなかったのなら,「NieR Replicant ver.1.22474487139...」で,「ニーア」シリーズの第一作に触れてほしい。
「NieR Replicant ver.1.22474487139…」公式サイト
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