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    アーケードに注力するスクウェア・エニックスの思惑とは? 柴×門井×丹沢プロデューサーが語る,ゲームセンターの今とコミュニティの未来

    アーケードに注力するスクウェア・エニックスの思惑とは? 柴×門井×丹沢プロデューサーが語る,ゲームセンターの今とコミュニティの未来

    スクール オブ ラグナロク
     2015年,スクウェア・エニックスのアーケードタイトルが活況を見せている。“オンライン 1vs1 タクティカル 5Dアクション”と銘打たれた新作「スクール オブ ラグナロク」,アーケード用3vs.3対戦アクションとして生まれ変わった「ディシディア ファイナルファンタジー」という2つの新作に加えて,「LORD of VERMILION III」では大型アップデートとなるVer.3.3「Chain-Gene」が稼働,「ガンスリンガー ストラトス2」も4月よりアニメが放映されるなど,各タイトルで新たな展開を迎えている状況だ。
     しかし,スクウェア・エニックスといえば,多くの読者にとっては,やはりコンシューマゲーム,それも大作RPGを制作するメーカーという印象が強いのではなかろうか。そんなスクウェア・エニックスが,どうして今アーケードに力を入れるのだろうか

     今回4Gamerでは,スクウェア・エニックスで数々のアーケードタイトルを手がけている第7ビジネス・ディビジョンの面々――「LORD of VERMILION」のシリーズ総合プロデューサーであり,「スクール オブ ラグナロク」のプロデューサーを兼任する柴 貴正氏,「ガンスリンガー ストラトス」シリーズプロデューサーの門井信樹氏,「LORD of VERMILION III」の現プロデューサーである丹沢悠一氏のお三方に集まっていただき,話をうかがう機会を得た。

     スクウェア・エニックスがアーケードに参入した経緯から各タイトルの現状,アーケードでは異色とも思える運営,さらには柴氏のプロデュース哲学にまで話はおよび,みっちりと濃密なレクチャーをいただいたので,その模様をインタビューとしてお届けしたい。
     各タイトルのファンはもちろん,アーケードゲームに関わるすべての人が必見の内容なので,時間のあるときにでも,ぜひご一読を。


    「スクール オブ ラグナロク」公式サイト

    「LORD of VERMILION III Chain-Gene」公式サイト

    「ガンスリンガー ストラトス2」公式サイト



    スクウェア・エニックスは今なぜ,アーケードに力を入れるのか


    4Gamer:
     スクウェア・エニックスといえば,やはりコンシューマ,とくにRPGのイメージが強いと思うのですが,本日お集まりいただいた皆さんは,その中でも長らくアーケードゲームを作り続けてきた方達です。まず,この辺りの経緯や意図についてお聞かせいただけますか。

    柴 貴正氏
    柴 貴正氏(以下,柴氏):
     じゃあ,僕らがアーケードをやるようになった経緯や,これまでの経歴をちゃんと説明した方がいいかな。

    4Gamer:
     ぜひお願いします。

    柴氏:
     まず,僕は「ディプスファンタジア」といったPCオンラインゲームや「ドラッグオンドラグーン」を手がけたあと,20代後半の頃,「不思議のダンジョン好きだし,ドラクエやってみようか」ってことで,「ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン」(以下,ヤンガス)を立ち上げました。で,それができあがる瞬間ぐらいに門井が入ってきて……デバッグを手伝ってもらったんだよね。

    門井信樹氏(以下,門井氏):
     ええ。ヤンガスができあがったとき,僕は1年目の後期でした。

    柴氏:
     ヤンガスが終わって,次は何をやろうかと考えたときに,「PlayStation 2のゲームはもうキツいんじゃないか?」って思ったんです。パッケージの値段は変わらないのに,開発費はどんどん膨れあがっていって,しかも世界中から面白いタイトルが出てきている。この市場は怖過ぎるなって。そんな中,スクエニがタイトーと合併したんですよ。

    4Gamer:
     2005年辺りのことですね。

    柴氏:
     僕はもともとコア向けのタイトルばかり作ってきましたし,それならコアプレイヤーの巣窟であるアーケードをやってみるのはどうだろうと。僕ら世代にはあるある話だと思うんですが,小~中学生の頃はアーケードゲームが大好きだったんですよね。スト2に死ぬほど金を使いつつ,全国大会の予選で……もちろん敗退したり(笑)。

    (一同笑)

    柴氏:
     昔のアーケードゲームって,コンシューマよりリッチなものが多かったじゃないですか。でも2005年辺りには,アーケードとコンシューマの関係はすでに逆転していて。……恐らくこれがアーケードに影が差した一番大きな理由だと思うんですが,「家庭用ゲーム機の方が面白いじゃん」という状況になってしまっていた。

    4Gamer:
     そんな空気は感じられましたね。

    柴氏:
     で,実際にアーケードについて調べてみたら,実際は同時期のコンシューマタイトルと比べて,ゲームの作り方――とくにグラフィックス面の作り込みは,それほど求められていないように感じたんですね。これならイケるはずだ,ということで,2006年頃に初代「LORD of VERMILION」(以下,LoV)のプロジェクトを立ち上げたんです。

    4Gamer:
     そもそもの話なんですが,初代LoVでアーケードTCGというジャンルに打って出たのはどうしてだったのですか。

    門井氏:
     当時,セガさんの「三国志大戦」がものすごく盛り上がっていて,スクウェア・エニックスとしてもカードゲームならいけるんじゃないか,という話になったんですよね。

    初代「LORD of VERMILION」
    スクール オブ ラグナロク
    柴氏:
     そうそう。スクウェア・エニックスのテイストを入れるなら,カードゲームっていうジャンルは相性が良くて,何より分かりやすいだろうと。

    4Gamer:
     LoVの企画を立ち上げたとき,社内での反応はどうだったのでしょうか。

    柴氏:
     いやもう,「アーケードが儲かるわけがない!」って猛反対でしたよ。

    門井氏:
     当時,松田さん(スクウェア・エニックス代表取締役社長の松田洋祐氏)が経理部長だったので,説得がめちゃめちゃ大変でしたね。「在庫リスクが高すぎる!」って(笑)。

    柴氏:
     何回も「受注生産です」と話をしたのに,「いや高い!」ってね(笑)。まあ,それぐらいスクエニはアーケードのことを分かってなかったんですよ。ただ,せっかくタイトーと一緒になるんだから,ちゃんと使わないとダメだろうという共通認識もあり,「どうやら柴がそういうことをやろうとしてるから一回預けてみよう」となった。で,門井にも手伝ってもらって。

    門井氏:
     そのときはまだ入社2年目だったんですが,運営プロデューサーをやらせてもらいました。僕の場合はその後,「初代」「2」「Re:2」と4年ぐらいLoVに関わってから,2010年頃に「ガンスリンガー ストラトス」(以下,ガンスト)を立ち上げた,という感じです。それで,LoVシリーズは「3」から丹沢さんにシフトしたんです。

    丹沢悠一氏(以下,丹沢氏):
     ええ。僕はもともと,タイトーで「ラクガキ王国」シリーズなどの企画を手がけていた開発畑の人間だったのですが,プロデュースの視点からゲームを作りたいと考えてスクウェア・エニックスに移ってきました。入った当初は,海外ゲームのローカライズや細かい仕事を色々とやっていたのですが,2010年頃,柴さんと一緒に「地獄の軍団」に関わったとき,「LoVの次の展開を考えている」と聞いて,チャンスとばかりにズサーッと(笑)。

    門井氏:
     丹沢さんにLoVが完全に移ってから,僕はガンストをやりながら「パズドラ バトルトーナメント」を作り,柴さんは「スクール オブ ラグナロク」(以下,スクラグ)を立ち上げた,というのがこの9年間の時系列での出来事です。

    4Gamer:
     なるほど。今話題に上がった新作アーケードタイトルやスクラグ,そして「ディシディア ファイナルファンタジー」(以下,ディシディア)と,スクウェア・エニックスは2015年になって,アーケード向けビッグタイトルを次々発表していますよね。それらについて……きっと,読者はこう感じていると思うんですよ。「このタイミングでアーケードにこんなに力を入れて,スクエニはどうしちゃったの?」って。

    柴氏:
     僕らからすれば,なんら不思議なことじゃないんだけど(笑)。その理由としては……初代LoVをやってみて,僕らがこれまでやってきたコンシューマゲームやPCオンラインゲームと比べて,熱量の高いプレイヤー達――僕らが良く言うところの“殴り合えるお客さん”が非常に多いと感じたっていうのがまずあって。

    4Gamer:
     「LORD of VERMILION ARENA」(以下,LoVA)のインタビューでもおっしゃっていましたね。

    柴氏:
     そう。これって実はすごく重要なことで。そこが気に入って,その後も僕らがアーケードタイトルを手がけていたら,社内全体で「アーケードは良いお客さんが多いから,そこに向けてもっと作ろう」という流れが出てきた。そうしたら,別の部署からディシディアの企画が立ち上がって……という経緯なんです。だから,スクエニがアーケードに力を入れているように見えるのはもう間違いなくそのとおりで,「そこにプラチナユーザーがいるから」というのが一番の理由です。



    1vs.1ストラテジーの新たな形を目指す「スクール オブ ラグナロク」


    4Gamer:
     ここからは,それぞれのタイトルについて,詳しく聞いてみたいと思います。まず,2月末から3月初旬にかけ,全国各地でロケテストが行われた「スクール オブ ラグナロク」ですが,反響はいかがだったでしょうか。

    柴氏:
     非常に良好でした。ロケテスト最終日の大会では,みんなめちゃくちゃうまくなっていまして,見ている人もゲームで何が起きているかをちゃんと理解して,盛り上がってくれました。パッと見では何をすれば良いのか分かりにくい,難しいゲームなんですけど。アーケードゲーマーだったら絶対に乗り越えてきてくれるだろうと信じて送り出したタイトルですが,蓋を開けてみたらやっぱり乗り越えてくれましたね。

    4Gamer:
     スクラグはRTS要素にTPS要素,さらにはアクションゲーム的な要素もあって,第一印象としては,確かに難しそうに見えるゲームです。そもそも,本作は一体どんな経緯で生まれてきたタイトルなんですか。

    「スクール オブ ラグナロク」
    スクール オブ ラグナロクスクール オブ ラグナロク
    スクール オブ ラグナロクスクール オブ ラグナロク

    柴氏:
     LoVシリーズは元々は1vs.1のゲームでしたが,「3」からは4vs.4のチーム戦になったんですね。もちろんそれはそれで面白いんだけど,そこで止めちゃった人もいて。

    丹沢氏:
     LoVシリーズを前作から続けて,現在もプレイしている人って実は全体の3割ぐらい。残りの7割は新規のプレイヤーなんです。で,「3」以前までのプレイヤーさんが今何を遊んでいるかを調べてみたら,やっぱり1vs.1の対戦ゲームが多かった。

    柴氏:
     でも,アーケードの1vs.1って,もう格ゲーぐらいしかないじゃないですか。とはいえ,格ゲーは修羅の国なので,あまり勝てていない人が多いみたいです。そういう人に向けて,もう一度1vs.1の戦略型対戦ゲームを作ろう,というのがスクラグの発端です。複数人対戦が今の主流ではありますが,アーケードゲーマーの根っこには,やっぱり「どっちが強いのかハッキリさせたい」想いがあるんじゃないかって。

    4Gamer:
     でも,LoVって基本的にはストラテジーですよね。本作は,もう少しアクション色が強いように思うのですが。

    柴氏:
     いや,LoVプレイヤーって,LoVを“戦略要素のあるアクションゲーム”と捉えている人が多いんですよ。“カードを自分で操作するアクション”という感じですね。実際,スクラグのロケテスト大会で優勝したのは,LoVランカーの中でもアクションに強いADLくんでしたし。そういう意味では,狙いどおりのターゲットに刺さるゲームになったと思っています。

    4Gamer:
     かつてのLoVプレイヤーがメインターゲットなんですね。2Dアクション時の見た目やボタンの配置から,格闘ゲーマーを視野に入れているのかと思ったのですが,そういうわけもない?

    柴氏:
     むしろ,格闘ゲーマーはそんなに遊ばないんじゃないかな。格闘ゲームって,1/60秒をめぐる駆け引きが面白いわけですが,本作のコアはそこではないですし。もちろん視野には入れていますが,どちらかと言えば外周の側ですね。格闘ゲーム風のカメラアングルを採用したのは,言ってしまえば“コンボを叩き込む気持ち良さ”を表現したかったからです。

    4Gamer:
     演出としての必然性から,あの形になったと。

    柴氏:
     そうそう。分かりやすさと気持ちよさを両立するうえで,格闘ゲーム風の見た目がもっとも適している,という判断です。

    4Gamer:
     では,ボタン配置があの形になったのは? 実際にプレイしてみると遊びやすいと感じるのですが,とはいえあの見た目はかなりインパクトがあります。個人的には,現行のアナログスティック付きゲームパッドの操作系でも良かったのではないかと。

    1レバー+1アナログスティック+8ボタンという本作のコントロールパネル。そのあまりに独特なボタン配置が,一部で話題を呼ぶことに
    スクール オブ ラグナロク

    柴氏:
     単純に,スクラグを遊ぶうえで一番操作しやすいインタフェースがあの形だった,というだけですね。ゲームパッド操作にしなかったのは,わざわざゲームセンターに来ていただく方に,アーケードらしいお持てなしをしたかったから。あと,ロケテストでは「キーコンフィグ機能が欲しい」という要望を多くいただきましたが,これは実装予定です。なので,あえて多目にボタンを用意した面もあります。

    4Gamer:
     不必要なボタンは,自分で整理することができると。もう一点,どうしても気になっていることがあります。なぜ本作の描画は30fpsなのでしょうか。コアの部分が格闘ゲームと違うことは分かりますが,アクション要素があることを考えると,解像度を落としてでも60fpsを維持した方が気持ち良いと思うのですが

    柴氏:
     おっしゃることは分かります。でも,これはオンライン全国対戦を快適に遊んでもらうためなんです。60fpsでのオンライン対戦って,技術的な難度がかなり高い。「鉄拳7」はうまくやっていますが,格闘ゲームはフィールドの広さが決まっていて,プレイヤーが何をするかもほぼ決まっています。対してスクラグはフィールドが広く,プレイの自由度も高い。そうすると,パケットのやり取りにおいて描画の部分がボトルネックになってしまうんです。

    4Gamer:
     うーん,なるほど……。

    柴氏:
     とはいえ,30fpsでも十分面白いゲームに仕上がったという自信はあるので,そこは安心していただければと。

    4Gamer:
     分かりました。ちなみに,稼働はいつ頃になる予定でしょうか。

    柴氏:
     ちょうど今,100話分くらいのストーリーモードをひいこら言いながら作っているところで,具体的な話はできないのですが……。

    4Gamer:
     100話分!?

    柴氏:
     なにせ,ロケテストバージョンの開発度は,あれで40%――大枠ができあがったくらいですから。そうだなあ……その昔,2~3月にロケテストを実施したLoVの稼働日は8月22日でした。だからまあ,そういうことだと思ってください(笑)。



    「ガンスリンガー ストラトス」が選んだ,コミュニティの育て方


    4Gamer:
     続いて「ガンスリンガー ストラトス2」についてなんですが,同シリーズのなによりすごいところは,これまでゲームセンターの外にいた若いプレイヤー達を呼び込み,定着させた点だと感じています。その秘けつは,どんなところにあったとお考えですか。

    門井氏:
     あえて言うならば,アニメファンに知名度の高い虚淵 玄さんや,ゲーム好きの声優さん達を起用したことが大きかったのかなと思っています。ゲームセンターの外側を意識したフックをたくさん用意し,そうした方々と一緒にイベントで各地を回って,かつそれを継続してきたつもりです。
     あと,女性プレイヤーにも遊んでもらえるよう,色々なところに気を遣っていて。……女性のプレイヤーがいると,やっぱり男性も増えるじゃないですか。

    4Gamer:
     確かに(笑)。女性1名と男性3名みたいなチームで遊んでいる人達を良く見かけますね。

    門井氏:
     例えば,ガンストでは水着コスチュームみたいなキャンペーンは絶対にやらないんですよ。何故かというと,女性プレイヤーが引いてしまうから。コラボ衣装などでどうしても……というもの以外は,ポリシーとして露出度の高い衣装は実装しないようにしています。

    柴氏:
     ……でも,パンツ見せるのはアリなんだよね?

    門井氏:
     あれは見せてるんじゃなくて,見えちゃうんです! 前々から「何とかならないのか」とは考えていますが,常に見えるわけじゃないので許してください。

    丹沢氏:
     ガンストは女性プレイヤーが多いこともあって,プレイ中の雰囲気が良いですよね。キャピキャピしていて,楽しそうというか。羨ましい(笑)。

    4Gamer:
     基本的に,チームメイトとしゃべりながら遊ぶゲームですものね。

    門井氏:
     そうですね。そうして考えると,ヘッドセットを設置したりといった努力で,店舗内のローカルコミュニティを盛り上げてくれたオペレーターさんのおかげという側面もありますね。その甲斐もあって,全体の65%がゲームセンターの外から来てくれたプレイヤーというデータが出ています。ありがたいことです。

    4Gamer:
     ガンストにまつわる直近のニュースでは,5月19日から「ウルトラストリートファイターIV」(以下,ウルIV)コラボ(関連記事)がスタートしますよね。以前インタビューでもお聞きしましたが,こうした“格闘ゲームコミュニティに向けたプロモーション”を行う理由はどこにあるんでしょうか。

    JAEPO2015で開催されたステージイベントから。カプコンの小野義徳氏,杉山晃一氏,綾野智章氏らが登壇し,「ウルトラストリートファイターIV」とのコラボレーションが発表された

    門井氏:
     格闘ゲームだけではなく,バンダイナムコエンターテインメントさんの「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス」シリーズを含めた,対戦ゲーム好きのプレイヤーに向けてアピールすることがガンストのコンセプトでした。なので,稼働前に賞金付き大会を発表したり,ふ~どくんマゴくんウメハラくんをフィーチャーしたりというのも,格闘ゲームコミュニティだけにフォーカスしたものではなかったんです。ただ,既存のコミュニティにならおうという意識はありましたね。ウルIVコラボもその流れの中にあって,たまたま縁のあったカプコンさんと,とんとん拍子で話が進んでいったという感じです。

    4Gamer:
     先ほどのスクラグの話だと「格闘ゲーマーはターゲットの外周」とのお話でしたが,ガンストの場合はどうでしょうか。

    門井氏:
     ガンストの場合は,もう少し中心に近いターゲットとして考えていました。立ち上げ初期は,FPSプレイヤーもターゲットと考えていましたが,それはちょっと違いましたね。結果的に見ると,ガンストと格闘ゲームコミュニティの相性はすごく良かった。プロゲーマー達のおかげで格闘ゲームコミュニティからガンストを認知してもらえましたし,今ではガンスト勢が暇な時間にウルIVを遊んでたりもしますから(笑)。

    丹沢氏:
     アーケードで広く認知されているコアな対戦ゲームって,もう格闘ゲームしかないんですよ。プロゲーマーの世界でも,日本で認知されているのは格闘ゲームだけですし。

    門井氏:
     ええ。それで,彼らを軸にプロモーションを展開することになりました。

    「ガンスリンガー ストラトス2」
    スクール オブ ラグナロクスクール オブ ラグナロク
    スクール オブ ラグナロクスクール オブ ラグナロク

    4Gamer:
     少し話が戻りますが,スクラグもプロモーションにはふ~ど氏を始めとする格闘ゲームコミュニティのプレイヤーを起用されていますよね(関連記事)。これも同じ理由ですか?

    柴氏:
     そうです。ターゲットとしては外周ですが,プレイヤーの中でキャラクターが立っているのは,格闘ゲーマーばかりですから。あと試合を実況する文化って,ほかのタイトルではあまりメジャーではないんですよ。

    4Gamer:
     そう言われると……確かに。

    門井氏:
     タレント揃いなんですよね。みんないい歳でちゃんとしていてトークもうまく,普通に接していても面白い人達ばかりですから。あと,ふ~どくんやウメハラくんみたいなプロゲーマーって,地方のアーケードゲーマーからしたら,雲の上の存在だったと思うんです。でも,ガンストなら,そういった人達とも一緒にゲームが遊べる。それがコミュニティの活性化にもつながったように思います。

    4Gamer:
     プロゲーマーと言えば,以前ふ~ど選手率いるチーム「勝ちたがり」の面々にインタビューしたとき,タカシ選手は「プロゲーマーになりたい」と語っていました。

    門井氏:
     ああ(笑)。ふ~どくんがガンストの象徴になったおかげか,プロゲーマーという存在やその文化が,ガンストのコミュニティ内にすごく浸透しているのを感じますね。タカシくんのようにプロゲーマーになりたいという人だけじゃなく,「作る側に回りたい」「運営したい」といった,ゲームに関わる仕事をしたいと考える人も多い印象です。

    丹沢氏:
     プロモーションを考える側からすると,やっぱりふ~どくんみたいなマルチにゲームがうまい人が一番ありがたいです。

    4Gamer:
     いやいや,あのレベルのプレイヤーは,世界中見渡してもなかなかいないんじゃないでしょうか(笑)。

    門井氏:
     僕はマゴくんも大好きですよ。負けてしまってもあんなに愛されるキャラって,ほかにいないですから。そんなわけで,非常に良いコミュニティであるからこそ,ジャンルは違えど色々一緒にやらせていただいている,という感じです。

    4Gamer:
     マゴ選手は最近勝ってしまいましたけど(笑)。ただ,格闘ゲーマーとしては,これだけ格闘ゲームコミュニティに寄り添ってきたのだから,スクウェア・エニックスさんには,ぜひ直球の格闘ゲームを出していただきたい。

    門井氏:
     いやあ,格闘ゲームを作るのはハードルが高過ぎて……。だって,「スクエニの新作格闘ゲーム」って言われても,皆さん頭にクエスチョンマークが浮かぶじゃないですか。

    4Gamer:
     そんなことはないですよ。「トバル No.1」「エアガイツ」があるじゃないですか。ぜひ続編を!

    門井氏:
     ありましたね……。もちろん,チャンスがあればチャレンジしてみたいですよ。ものすごく勇気がいりそうですけど(笑)。

    4Gamer:
     期待しておきます。ちなみに,ガンストといえば待望のテレビアニメが現在放映中です。こちらについて,アーケード版のプレイヤーに向けたアピールはあるでしょうか。

    門井氏:
     スクウェア・エニックスとしてはシナリオをチェックするくらいで,アニメはアニプレックスさんにお任せしているんですよ。ただ,アーケード版では一切語られなかった部分が明らかになるので,その辺りはぜひチェックしてほしいですね。アーケードからほかのメディアに展開していくというのは,ハードルが高いことが多いですが,今回のアニメ化をサンプルとして,ほかのタイトルにも応用できたらいいと思っています。

    4Gamer:
     となると,次はLoVのアニメ化ですね。

    門井氏:
     いやいや,そういう意味じゃありませんから! ただ自分の抱負を述べただけです(笑)。

    「ULTIMATTE FIGHT FINAL FANTASY XIV」サプライズムービー(再掲)

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    スクウェア・エニックスの格闘ゲームといえば,直近ではニコニコ超会議2015で公開された「ULTIMATTE FIGHT FINAL FANTASY XIV 激闘エオルゼア」が思い浮かぶ。「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」のモーションスタッフが2か月で制作したジョーク映像なので,あまり真面目に語るのも野暮なのだが,どことなく「モータルコンバットっぽい」と感じた人が多いのではないだろうか。これは恐らく,モーションのメリハリが薄く,ヒットストップの時間が短いため。これだけでも,格闘ゲームらしい格闘ゲームを作るのがいかに難しいのかがわかるだろう

    4Gamer:
     次は「LORD of VERMILION III」についてお聞きしたいのですが,実は4GamerでアーケードのLoVシリーズについてお話を聞くのは,今回が初めてだったりします。まず改めて,LoV3の現状について教えていただけますか。

    丹沢氏:
     そうですね。女性プレイヤーの多いガンストが羨ましいという話をさっきしたので,プレイヤー層の話をしますと,LoV3は95%くらいが男性プレイヤーです。コアタイムは21:00頃で,ネクタイを外しつつ「よし,やるか」というのが,平均的なLoVプレイヤーの姿だと思っていただいていいと思います。

    4Gamer:
     同じ4vs.4の対戦ゲームではあっても,まったく違うんですね。年齢層も高めということですか?

    丹沢氏:
     ええ。これはTCGというジャンルの性質上,仕方のない部分でもあるのですが,ほかのアーケードゲームに比べてどうしてもお金がかかってしまう。そういうところも,年齢層が高くなる要因だと思っています。ゲーム側でもそういったプレイヤーのプレイスタイルに合わせて,ガンストで言うところの4人バーストは,実装していません。

    ※同じ店舗内のプレイヤーとチームを組んで,オンライン対戦に参加すること。「機動戦士ガンダム 戦場の絆」の「バーストマッチング」が語源。

    4Gamer:
     必ず野良同士でマッチングすることになると。それは,どうしてですか?

    丹沢氏:
     会社帰りに1人でゲームセンターに寄って遊ぶお客さんに,最大限楽しんでもらうためですね。会社帰りの人が,4人で集まってゲームセンターに行くというのは,どうしても難しい側面がありますから。なので,オンライン対戦ではランダムマッチという基本スタンスは崩さないつもりでいます。ただ,年に一度の全国大会はチーム参加ですし,店舗内対戦なら任意のプレイヤーとチームが組めます。

    門井氏:
     LoV3は隣の人とチームを組むわけではないので,みんな黙々とプレイしている印象ですね。だから,ガンストと同じフロアに設置されていたりすると,LoV3のプレイヤーから「ガンスト勢うるせえ!」と言われるそうで。どうも,そこの相性は良くないみたいで(笑)。

    (一同笑)

    4Gamer:
     最新バージョン「LORD of VERMILION III Chain-Gene」がいよいよ稼働開始となりましたが,新システムの追加のほか,ガンスト,アニメの「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」(以下,Fate),そして「鉄拳」シリーズとのコラボが行われるとのこと。この辺りの経緯についてお聞かせいただけますか。

    丹沢氏:
     LoVシリーズは,これまでにもさまざまなコラボを行ってきたこともあり,プレイヤーの皆さんからも色々な予想や要望があがってくるんですよ。Fateに関しては,とくに要望が多かった作品で,ようやく出せたといったところです。アーケード作品とのコラボにも積極的でして,ガンストと鉄拳はその枠ということになりますね。ガンストは自社タイトルなので当然と思う人も多いのではないかと思いますが,鉄拳はびっくりした人も多かったのではないでしょうか。

    「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」とのコラボカード(左)と,「鉄拳」シリーズとのコラボカード(右)
    スクール オブ ラグナロクスクール オブ ラグナロク

    4Gamer:
     いや,正直言って驚きました。鉄拳のプレイヤー層とは,ほとんど被っていないように思っていたので。

    柴氏:
     コラボの目的は,基本的にコラボ先のタイトルからプレイヤーを連れてくるというより,楽しそうな雰囲気を出すのが目的ですからね。

    丹沢氏:
     そうそう。ゲームセンターの壁に,LoVと鉄拳のポスターが貼ってあったら,ちょっとお祭り感が出るじゃないですか。なので,プレイヤー層の被りというのはあまり考えていないんです。とはいえ,メリットはお互いにちゃんとあって。コラボレーションをきっかけに,コラボ先のゲームやコンテンツに興味をもった,というLoV3プレイヤーの声もよく聞きます。

    4Gamer:
     なるほど。その逆のパターンもありそうですね。

    丹沢氏:
     LoVはスターターパックを買う必要があったり,遊ぶための初期投資が結構かかってしまうので,あまり数は多くないですけどね(笑)。ただ,コラボによってゲームセンターが盛り上がるのであれば,それは僕らにとっても必ず良い結果につながるはずなので。今後もこういった試みは続けていきたいと思っています。

    4Gamer:
     これはLoVシリーズ,さらにはスクウェア・エニックスのアーケードタイトル全般に言えることですが,その最大の功績は,それまでの基板売り切り型だったアーケードゲームの世界に,運営の概念を持ち込んだことだと思うんです。まさに,初代LoVがその先鞭だったと思うのですが,何か明確な狙いがあったのでしょうか。

    柴氏:
     初代LoVの頃は,運営をしているつもりはまったくなかったんですけどね。お客さんがそこにいて,何かを叫んでいるからそれに応え続けていたら,いつの間にか運営っぽい仕事になっていたという。

    門井氏:
     そもそも,初代LoVの初期は「ネットワークがつながらない!」とか「他の人とアカウントデータが入れ替わる!」といったヘビーなバグが次々と出てしまい,それどころじゃなかったんです(苦笑)。……ただ,そうしたトラブルに対処し続けたことが,今日の運営につながる大きな財産になったということは,あると思います。

    4Gamer:
     結果的に,そう見えただけだったと?

    門井氏:
     今だから言えることですが,初代LoVの初期のプランでは,新規カードの追加は,実は半年に1度のペースを予定していたんです。でも,トラブルでプレイヤーの皆さんにご迷惑をおかけしてしまった分を,なんとか盛り返さなければと思い,結局3か月に1回のペースに早めることになったりとか。

    4Gamer:
     今からすると,半年1回というのは考えられませんね。

    門井氏:
     そうなんですよ。ほかにも,プレイヤーの皆さんへのお詫びとして,サキュバスのPRカードを1万枚プレゼントしたことがあったんですが,そのときは「カードを袋に入れ,また閉じて……」という作業を,夏休みを返上してやってました。そういうことを繰り返す中で,徐々に運営が必要だという意識が芽生えていったのかも。

    柴氏:
     ゲームを作るのがそんなに上手じゃないから,その必然として運営を頑張らざるを得なかったのかもしれないですね(笑)。


    4Gamer:
     柴さんは,元々オンラインゲームのチームにいらしたわけですが,それはあまり関係がないですか?

    柴氏:
     そうですね。そこで得たノウハウはほとんど使っていなくて,もっとプレイヤー寄りの感覚として,「こうしてくれたら嬉しいのに」と思えることを,こっちからやっていこうという感じだったと思います。

    門井氏:
     LoVの運営には,僕ともう一人齋藤という人間が関わっていたんですが,彼は「ファイナルファンタジーXI」(以下,FF11)の廃人で,僕は「ラグナロクオンライン」(以下,RO)の廃人だったんです。だから,LoVの運営自体は,FF11やROのプレイヤーとして楽しかったことや嬉しかったことを,トレースしていたという感じなんですよ。「そういえばオフラインイベント楽しかったよね,やってみよう」みたいな。

    4Gamer:
     今もずっと続いているLoVのイベントも,その流れから生まれてきたわけですか。

    柴氏:
     そうです。「OVER the LORD」という地方予選勝ち抜き方式の全国大会もそうですし,もうちょっとライトな「ヴァーミリオン フェスティバル」だとか,地方巡業のキャラバンも「面白そうだからとにかくやってみよう」というのが端緒です。

    丹沢氏:
     イベントって本当に重要なんですよ。あれは,個々のプレイヤーさんがそれぞれ持っているコミュニティをつなげる場として機能しているんです。そこで友達が出来たら,例えば受験などで半年ぐらい離れることになっても,また戻って来てくれる。運営の立場から言えば,離脱率がぐっと低くなるわけです。

    4Gamer:
     確かに,スクウェア・エニックスのアーケードイベントでは,会場でお客さん同士が和気あいあいと話していますよね。それも,そうした試みを積み重ねてきたからこそなんですね。

    柴氏:
     スクラグの営業活動で,オペレーターさん(ゲームセンター経営者)と話す機会が何度もありましたが,二言目には「スクエニは運営をしっかりやってくれるのでありがたい」と言っていただけるようになりました。

    4Gamer:
     実際,ロケテストであれだけしっかりした小冊子を配るのは珍しいです。

    柴氏:
     そうかもしれません。ただ,ガンストなんてもっと色々なことをやっていますからね。

    門井氏:
     ……正直,大変ですよ(笑)。最近は「ガンストの運営が標準」って言われたりもするので。

    4Gamer:
     イベントの翌日に新要素を実装したりとか。

    門井氏:
     あれは「Appleの真似してみよう」って言って始めちゃったんですよね。ガンストはプレイヤーが若いから,発表したらすぐ遊べるようにしないとダメだろうって言って。

    柴氏:
     僕らは第7ビジネス・ディビジョンといって,僕が部長をやらせてもらっているんだけど,逆に言うとほかには誰もいないんですよ。だから,とにかく決済が早い。そのスピード感が,今の時代に合っていたのかもしれません。なにせさっき話してたLoV3とガンストのコラボなんて,僕は今知ったくらいなんだから(笑)。

    (一同笑)

    スクール オブ ラグナロク


    スクウェア・エニックスがアーケードに見ているもの


    4Gamer:
     冒頭の質問に戻るのですが,柴さんがアーケードでゲームを作り続けるのは,「そこにプラチナユーザーがいるから」というお答えでしたよね。このプラチナユーザーというのは,もっと具体的にどういう人達の事を指しているのでしょうか。

    柴氏:
     ゲームに自分の時間を一番割いてくれている,本当にゲームが好きな人達――いわゆるガチ勢のことですね。ゲームが本当に好きだからこそ,常にゲームの情報を追いかけているし,お金もちゃんと払ってくれる。そして運営側の不実に対しては,ちゃんと毒づきもする。そういう人って,「にわかは黙れ」みたいに,ときにライトユーザーに対して厳しく当たることもありますが,そこまで含めて,僕は「いいな」と思っているんです。
     プレイヤーにとっても開発にとっても,カロリーをかけた分だけの何か――コミュニティにおける発言権だったり,インカムの数字だったりが返ってくるべきで,それはすごく正しいことじゃないですか?

    丹沢氏:
     要はカラオケに2時間行って2000円払うのと,ゲームを2000円分遊ぶのとで,そのどちらにより価値を見出すか,だと思うんです。その天秤において,ゲームを選び続ける人がいてくれるなら,それは僕らにとって良いお客さん以外の何者でもない。

    門井氏:
     ガチ勢の人と話をすると,「これは何クレ(クレジット)分だな」なんて良く言われますからね。ファン向けの書籍を作ったときなんか,「この本1冊で15回遊べるんだけどなあ」とか(笑)。

    (一同笑)

    4Gamer:
     ゲームが正しく評価されやすい場ということですよね。その1プレイが,1クレジットの価値に見合うかどうかが,常に試されるという。ただ,最近はアーケード以外でも,さまざまな従量制の課金方式が出てきています。F2Pのアイテム課金であるとか,DLCによる追加コンテンツであるとか。遊んだ人が遊んだだけお金を払う仕組みというのは,もはやアーケードだけのものではないと思いますが。

    柴氏:
     ゲームとお金のバランスだけを考えるなら,確かにコンシューマで近いことができるかもしれません。仮にオンライン上にゲーセンと同じ仕組みを作ったら,ちゃんと盛り上がるのかもしれない。でも,ゲームセンターという場所の価値って,それだけじゃないですよね。

    4Gamer:
     それは……つまりオフラインのコミュニティということですか。

    柴氏:
     ええ。ゲーセンという場所で自然発生するコミュニケーション――話すこと・見せること・教えることというのは,今のところオンラインでは完全に再現できないと思うんです。そもそも,ゲーセンに足を運ぶという行為自体,プレイヤーは少なくないコストを支払っているわけですし。作り手として,なるべくそういう人達を相手に会話したいという思いがあります。

    4Gamer:
     なるほど,よく分かるお話です。しかし……ちゃんと儲かるものなのでしょうか。というのも,4Gamerではさまざまなアーケードタイトルのメーカーやクリエーターに“アーケードにこだわる理由”を聞いてきましたが,結局のところ「僕はここで育ってきたから,恩返しがしたい」といった,矜持の話になりがちでして。

    柴氏:
     僕はプロデューサーだから,儲からなかったらやりませんよ。で,そうやって稼いだお金を使って,自分の矜持も満足させる。だから,半々ですね。もちろん,年々ビジネスとして難しくなってきてはいますが,アーケードみたいなプラチナユーザーを相手に大失敗するなんて,お客さんの顔をちゃんと見ていなかっただけなんじゃないかな。……なんて言って,スクラグで外したら「こいつらも見えてないじゃん」ってなりそうでちょっと怖いんだけど(笑)。


    4Gamer:
     公表されている決算(pdf)を見るかぎり,アーケード部門の数字はとても健全ですよね。

    柴氏:
     なんて言うのかな。今のアーケードの現状って,僕にとっては単にバブルが崩壊しただけという感覚なんです。昔のアーケードって,機械を置いておくだけでお金がバンバン入ってきた時代があって,制作側やオペレーターさんの中には,そりゃあいい加減な人もいたわけですよ。今はもう,それは通用しませんから,タイトルも厳選されてきたし,どこのメーカーもちゃんと運営をするようになった。だから非常に健康的なマーケットだと思いますよ。

    門井氏:
     アーケード市場が縮小していると良く言われますが,そうは言っても年に5~10%程度の割合です。正直,コンシューマ市場ほどではないわけで,ある意味では安定していると言ってもいい。

    柴氏:
     アーケードで成功するのに大事なのは,ちゃんとお客さんの顔を見ることと,誠実であること,これだけなんです。だってこれだけ良いお客さんが多いんだから,最初の数人さえ居着いてくれたら,あとは口コミで広がって行きますから。もちろん,時間はかかりますけどね。

    4Gamer:
     ある意味,アーリーアダプターだらけの市場だと。ああ,“良いお客さん”という言葉には,そういう意味もあるんですね。

    門井氏:
     ただ,これは自分自身の反省でもあるんですが,新しいお客さんを呼びたいと考えたとき,僕ら制作者側は,どうしてもゲームを簡単にする方向に向かいがちです。すると,元からいたお客さん達が満足できずに,去って行ってしまう。

    柴氏:
     実際,ゲームはちょっと難しいぐらいがいいんですよ。その方が「絶対乗りこなしてやるぜ!」というお客さん達がついてくる。スクラグのボタン配置もそうですけど,使いこなしたときのカッコ良さや気持ちよさを優先すべきなんです。

    丹沢氏:
     格ゲー黎明期のドキドキ感なんて,まさにそれだと思いますね。昇龍拳を出せる人が少なかった時代に,ちゃんと昇龍拳で対空できる人がカッコ良くて,それに憧れて練習し始めた人は少なくないでしょう。もし昇龍拳がワンボタンで簡単に出せていたら,あそこまでのブームを築くことはなかったと思います。

    4Gamer:
     確かにそうかもしれません。「モンスターハンター」シリーズにしたって,決して簡単なゲームではないわけですし。操作やメカニクスの難しさと裾野の広さに相関関係がない……とまではいかなくても,思っているよりは全然薄いのかもしれない。

    門井氏:
     だから,新しい人を呼び込むには,ビジュアルやキャラクターといった,ゲーム以外の要素を使うのが正しいやり方なんだろうと考えていて。ガンストのアニメ化も,実はそこにつながっていたりするんです。

    柴氏:
     そういう意味では,ディシディアは久しぶりに外からお客さんを連れてきてくれそうなタイトルだよね。

    門井氏:
     そうですね。ゲームシステム的に,ちょっとガンストと被るところがあって,どうしようなんて思ったりもしますけど(笑)。

    丹沢氏:
     とはいえ,そこはアーケードの面白いところですよね。自社だけでなく,セガさんやバンナムさんがヒット作を出してくれれば,僕らのお客さんが増えることにもつながる。ゲームセンターに新しいお客さんを呼び込むのって,ものすごくハードルが高いんです。それを実現してくれるタイトルが一つでも加わってくれるなら,それは喜ぶべきことだなと。

    柴氏:
     僕らとしてもね,ゲーセン自体が盛り上がっていかないことには,ビジネスが成りたたなくなりますし,ちょっと聞こえは悪いですが,オペレーターさんにハズレ筐体を引かれると,のちのち自分達が困ってしまうことになる。アーケードに関わるすべての人達ががんばっている現状は,すごく良い形だと思いますよ。

    4Gamer:
     興味の尽きないお話ですが,そろそろお時間のようです。締めとして,各タイトルごとのファンに向けたメッセージをお願いできますか。

    テレビアニメ「ガンスリンガー ストラトス」
    スクール オブ ラグナロク
    門井氏:
     ではまず僕から。「ガンスト」は4月からテレビアニメの放送が始まっています。さっき言ったように,新しいプレイヤーがゲームセンターに足を運んでくれるようになるための施策の一つと考えていますので。まずはこれをしっかり成功させたいですね。全国どこでも見られるので,ぜひチェックして見てください
     それとPC版の「ガンスリンガー ストラトス リローデッド」も,無事ネットワークテストを終え,次のテストの準備をしているところです。アーケード版とは大きく異なるゲームですが,こちらもぜひご期待ください。

    丹沢氏:
     「LORD of VERMILION III Chain-Gene」は稼働直後ということもあり,ファンの皆さんは一番盛り上がっているところなんじゃないかと思います。LoVシリーズはこの中では一番の古株ではありますが,すでに次なる動きも企画していますし,今後もアーケードチーム一丸となって,どんどん新しいことに挑戦していくのでご期待ください。
     あと,PC用の「LORD of VERMILION ARENA」もありますので,こちらもぜひ。正式サービスが開始したら,閉店まではゲーセンで,家に返ったら朝までARENAで遊んでいただけると嬉しいですね。

    門井氏:
     いや,それはさすがにしんどくない? とはいえ,どちらもアーケード出身のPCオンラインゲームとして共に盛り上げて行くつもりです。普段アーケードに行かない人もぜひ一度は試していただきたいですね。

    柴氏:
     「スクラグ」はロケテストで2000通弱のアンケートをいただきまして,ただいまそれをじっくり読み込んでいるところです。僕らとしても「うん,そのとおりだよね」という的確な意見が数多く寄せられていて,そういう意味では,僕らの思い描く完成図と,プレイヤーの皆さんの思いはズレていないと確信しております。
     ゲームシステムから話題にのぼったボタン配置も含め,ちょっと変なゲームではありますが,それはつまり新しい体験ができる新しいゲームということでもあります。暑くなる頃には皆さんの前にお届けできると思いますので,ぜひ楽しみにしていてください。

    4Gamer:
     本日は長時間,ありがとうございました。

    スクール オブ ラグナロク

    「スクール オブ ラグナロク」公式サイト

    「LORD of VERMILION III Twin Lance」公式サイト

    「ガンスリンガー ストラトス2」公式サイト



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