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22世紀少年


    公称消費電力は脅威の500W。AMD,1499ドルのデュアルGPUカード「Radeon R9 295X2」を発表


    R9 295X2。かつての「X2」は,半角アキを挟んで表記されていたが,今回は295に続けての表記される
    Radeon R9 200
     2014年4月8日21:00,AMDは,同社のコンシューマ向けグラフィックス製品の新たな最上位モデルとなる「Radeon R9 295X2」(以下,R9 295X2)を発表した。
     「X2」という製品名からピンときた読者も多いと思うが,R9 295X2は,2基のGPUを1枚の基板へ実装した,いわゆるデュアルGPUカードだ。AMDは,「世界最高性能」を謳うと同時に「極めて危険なグラフィックスカード」とも位置づけているが,果たして何が危険なのか。AMDによる事前説明会の内容と,担当者から直接聞いた情報を踏まえ,R9 295X2というグラフィックスカードの正体に迫ってみたい。

    事前説明会ではAMD本社でデスクトップPC向けGPUのプロダクトマネージャーを務めているDevon Nekechuk(デヴォン・ネケチャク)氏(Product Manager, Desktop Graphics Product Management, Global Business Unit, AMD)が登壇。氏は,R9 295X2が,速いだけでなく,極めて危険な製品であると位置づけていた
    Radeon R9 200


    消費電力は約500W。2基のR9 290Xを簡易液冷システムで冷却するR9 295X2


    Radeon R9 200
     さて,結論めいたことから先に述べておくと,R9 295X2では,Radeon R9 200シリーズにおけるシングルGPUの最上位モデルとなる「Radeon R9 290X」(以下,R9 290X)が2基搭載されている。AMDはこれまでもトップエンド製品でデュアルGPUカードを展開してきた実績があるので,それ自体は驚くに値しないかもしれないが,今回は,AMDのリファレンスデザインとして初めて簡易液冷ユニットを採用するのと,公称典型消費電力が500W(!),公称の最大消費電力が550W(!!)と,強烈な消費電力値が公開されているのがトピックとなる。

    簡易液冷ユニットを標準採用するR9 295X2。筆者の記憶にある限り,「GPUメーカーが,自社のリファレンスデザインで簡易液冷クーラーを採用する」例は今回が初めて
    Radeon R9 200

    Radeon R9 200
    ARES2-6GD5。補助電源コネクタは8ピン×3という,トンデモない製品だった
    Radeon R9 200
    R9 295X2の主なスペック
     簡易液冷ユニットを組み合わせたデュアルGPUカードはASUSTeK Computerのデュアル「Radeon HD 7970 GHz Edition」(以下,HD 7970 GE)カード「ARES2-6GD5」という例があるので,新鮮味はないかもしれないが,AMDが公式にその仕様を採用してきたというのは,大きなニュースだ。

     そのスペックをR9 290X,そして,Radeon HD 7000世代のデュアルGPUカード「Radeon HD 7990」(以下,HD 7990)と比較したものがになる。見て分かるとおり,R9 295X2で搭載されるGPUのスペックはR9 290Xそのものであり,むしろ「AMD PowerTune with Boost」による自動クロックアップ機能の最大値はR9 290Xの1000MHzから1018MHzへ,若干ながら引き上げられているのが目を引く。HD 7970 GEのデュアルGPUカードとなるHD 7990では,さまざまな制約からブースト機能の省略が行われているのに対し,R9 295X2では,妥協どころか,より攻撃的なクロック設定が行われているわけである。


     そういう仕様なので,R9 295X2を使うには,PC側に強力な電源ユニットが必要になる。PCI Express補助電源コネクタが8ピン×2というのはHD 7990から変わっていないが,R9 295X2で新たに以下の要件が追加された点は押さえておくべきだろう。

    • 8ピンコネクタ1系統あたり最大28Aの電流が供給でき,2系統の合計で50A以上の供給が可能な電源ユニット

     ただ単に大容量なだけの電源ユニットでは,R9 295X2の要求を満たせない場合がある。AMDは公式サイトで推奨電源ユニットのリストを公開するとのことなので,R9 295X2を購入する予定があるなら,必ずチェックするようにしてほしい。
     なお,推奨製品リストには,R9 295X2のCrossFire,つまりは4-wayのCrossFireに向けて動作検証済みの電源ユニットや,推奨PCケースも含まれているとのことだ。

    R9 295X2の製品情報ページ(※推奨製品リスト含む)

    ※原稿執筆時点では未公開

     Nekechuk氏によれば,R9 295X2は「Catalyst Control Center」の「AMD OverDrive」によるオーバークロック設定にも対応しており,やろうと思えばGPUコアクロックを2GHz,メモリクロックを8000MHz相当(実クロック2000MHz)にまで引き上げることも,自己責任を覚悟すれば不可能ではないそうだ。氏は,R9 295X2が6Gbps仕様のGDDR5メモリチップを搭載することも明らかにしていた。


    クーラーの構造を理解する

    簡易液冷クーラーはAsetek製


     R9 295X2では,以下のとおり分解写真が公開されている。

    R9 295X2を“4枚おろし”にしたイメージ。基板の両面をヒートプレートではさむ構造なのが分かる
    Radeon R9 200

     Nekechuk氏によると,本体のカバー部に取り付けられた1基のファンは,基板の部品面にあるヒートプレートを冷却するために用意されているとのこと。具体的にはグラフィックスメモリチップと電源部のMOSFET,そしてPLX Technology製のPCI Expressクロスバースイッチ「PEX 8474」の冷却をファンで行っているという。
     カバー部のファンは負荷に応じて回転数が動的に変化するモデルで,その基準となるのは冷却対象となる各コンポーネントの温度や負荷状況だ。GPUの温度ではない。

    Radeon R9 200
    ヒートプレートもカバーも金属製で「重厚な手触りがある」とNekechuk氏。実際に手に持ってみるとずっしりと重い
    Radeon R9 200
    ファンとカバー部側面のRadeonロゴには計4個の赤色LEDが埋め込まれ,負荷に応じて明るさが変わるという,凝った仕組みになっている

    Radeon R9 200
     簡易液冷ユニットは,この市場で実績豊富な米Asetek製。GPU用の液冷ヘッド部は,AsetekのCPU向け液冷ヘッドをR9 295X2用にカスタマイズしたものになっており,この簡易液冷ユニットを用いることで,GPUの温度は高負荷時にも75℃未満に収まるという。
     ただし,この温度は当然のことながら「ラジエータをどこに置くか」に左右され,Nekechuk氏も「CPUクーラーの排気の“先”にラジエータが来るような配置は避けるべき」と述べている。このあたりは簡易液冷クーラーの基本ではあるものの,簡易液冷クーラーだからこそエアフローは重要なので,この点は押さえておくべきだろう。

    AMDが公開した,R9 295X2のクーラー分解イメージ。2基あるGPUの熱はパイプを伝ってラジエータに運ばれ,そこでファンによって冷却される。それ以外のコンポーネントはカバー部のファンで冷却される仕様だ
    Radeon R9 200

     なお,ラジエータ部に取り付けられたファンは120mm角で,その回転数は液温を基準に制御されている。回転数の手動制御はサポートされていないが,「Catalyst Control CenterからGPU温度の設定が行えるから,間接的には回転数の制御も行えるだろう」とはNekechuk氏の弁である。

     基板もチェックしてみたい。下に示したのは,これまたAMDが公開したイメージだが,それを見ると,2基あるGPUを取り囲むようにそれぞれ8枚のGDDR5 SDRAMが取り付けられているのが分かる。型番は読めないものの,韓国SK Hynix製のようだ。

    AMDが示したR9 295X2の基板。コイルの数と位置からするに,電源部はGPUあたり5フェーズずつ,メモリチップ用に1フェーズずつで,PEX 8474に1フェーズの,合計13フェーズになるようだ
    Radeon R9 200

     向かって左側のGPUから見てすぐ右手,金属製ヒートスプレッダの付いたLSIがPEX 8474だ。Radeon R9 290シリーズでAMDは,ブリッジコネクタを用いることなく,PCI Express経由でGPU間のダイレクトアクセスを行えるようにしているわけだが,「R9 295X2ではその仕組みに,CorssFire用のカスタマイズをさらに加え,最高性能を引き出せる設計になっている」(Nekechuk氏)という。
     実際,R9 295X2の性能は,R9 290XのCrossFire構成と比べて約5%高くなっているとのこと。最大動作クロック自体は2%弱しか上がっていないにもかかわらず,それを超えた性能向上率が得られているのは,PEX 8474を介したGPUのダイレクトアクセス効果によるものと考えられる。


    ターゲットとなる解像度は4K

    2560×1600ドットですら足りない!?


     Nekechuk氏は説明会で,「最近のグラフィックスカードは,とても扱いやすく,接続すれば当たり前のように動作する。それはとても良いこと」としつつ,そこには“ぬるさ”もあったと指摘。そこで,巷に溢れるグラフィックスカードとは一線を画す,「非常に危険な,それでいてゲーマーが喜ぶ製品」をコンセプトに,デュアルGPUカード開発計画をスタートさせたと,R9 295X2開発の経緯を述べていた。結果生まれたのが,「消費電力と冷却機構,そして性能のすべてにおいて,従来の常識を打ち破ったグラフィックスカード」(同氏)なのだ。

    R9 295X2の開発コードネームは「Project Hydra」。Hydraはギリシア神話に登場する多頭の大蛇だ。ちなみに右の画像は北米市場でティザーに使われたマークだが,ここでHydraの周りに書かれているのは,旧約聖書「コヘレトの言葉」4章9節より「ひとりよりもふたりが良い」(※新改訳より原文ママ)という意味のラテン語
    Radeon R9 200Radeon R9 200

     ターゲットとなる解像度は,ズバリ4K。Nekechuk氏は,「2560×1600ドットですら,R9 295X2には適さない。R9 295X2は4Kディスプレイと組み合わせて使ってほしい」と呼びかけていた。もちろん,4Kを超えた解像度にも対応しており,最大3枚の4KディスプレイによるEyefinity構成(=複数台のディスプレイを1枚のデスクトップとして扱う構成)もサポートするという。

    外部出力インタフェースはDual-Link DVI-D×1,Mini DisplayPort×4。ターゲット解像度は4Kだ
    Radeon R9 200Radeon R9 200

    2基のGPU合計で5632基ものシェーダプロセッサによって,最大で11.5TFLOPSとという演算性能を叩き出すとされる
    Radeon R9 200
     ところで,ウルトラハイエンドのデュアルGPUカードとしては,NVIDIAが3月開催の自社イベント「GPU Technology Conference 2014」で披露したデュアルGPUカード「GeForce GTX TITAN Z」が記憶に新しいが,Nekechuk氏はR9 295X2の単精度浮動小数点数演算性能が11.5TFLOPSに達することを示しつつ,「競合が(8TFLOPSと,演算性能で劣る)GeForce GTX TITAN Zを発表してくれて逆に嬉しい」とジョークを述べて笑いを誘っていた。それだけ,R9 295X2の性能には自信があるということなのだろう。

     気になる価格だが,北米市場における想定売価は1499ドルと,さすがに高い。しかも電源ユニットやPCケースを選ぶわけで,当然のことながら万人向けとはいえないが,少なくとも4月8日時点における史上最速のシングルカードであることはまずもって疑いようがないため,その点に惹かれる人はいるだろう。
     4Gamerでは別途,性能検証を行っているので,そちらもぜひチェックしてほしい。

    「Radeon R9 295X2」レビュー。“デュアルR9 290X”は疑いなく史上最速シングルカードだ



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