Access Accepted第414回:欧米ゲーム業界で続く「仕切り直し」
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技術やビジネスモデルが日々進化するゲーム業界だが,最近,人の目に触れることのなくなった旧作の復活や,失敗したハードウェアやサービスを作り直そうという「仕切り直し」の動きを見かけるようになった。今回は,最近の欧米ゲーム業界のニュースを,「仕切り直し」というキーワードでまとめてみたい。
批判されても諦めないゲーム開発者の心意気
家庭で手軽にコンピュータゲームを楽しめるようになって30年以上。最近,シリーズ最新作でありながら,「仕切り直し」の意味を込めて,ナンバリングやサブタイトルを付けない作品が次々にリリースされてきた。「Sid Meier's Pirates!」や「Prince of Persia」などに始まり,「Medal of Honor」「SimCity」「Tomb Raider」,そして最近リリースされた「Thief」といった作品が続いている。
こうした作品の背後には,過去の名作や傑作を「現在の技術を使って,さらに良いゲームにしたい」という,開発者達の熱意が見え隠れする。オリジナルタイトルをプレイして育った世代が開発者になり,自分の遊んだゲームをこのように作り直してみたい,という情熱に駆られている場合もああるだろう。
もちろん,ビジネス的に「シリーズの最近のゲームがうまくいかなかったので,仕切り直して再出発」というドライな選択もあるはずで,状況としてはそちらのケースのほうが多そうだ。しかし,一度信用に傷がついた作品は,たとえ過去の名作タイトルと同じに名前したとしても立ち直らせるのは難しいものだろう。
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そうした「仕切り直し」に果敢に挑戦しているのが,「Diablo III」のBlizzard Entertainmentだ。2012年5月15日にリリースされた本作は,ローンチ当初にサーバーの不具合が続いたうえ,リアルマネーによるオークションシステムによって,Diabloが本来持っていたアイテム収集の面白さが失われたという批判を浴びてしまった。同社のCEOを務めるマイク・モーヘイム(Mike Morhaime)氏がそうした批判に対して真摯なメッセージを送ったものの,発売から3か月後の同年8月には開発者達がソーシャルネットワークで暴言を吐くなどしたことは,当連載の第356回「『Diablo III』のゲームディレクターが投稿した一通の謝罪文」で詳しく紹介したとおりだ。
その「Diablo III」は,2年近く経った現在でもBlizzard Entertainmentによりアップデートが続けられており,拡張パック「Diablo III: Reaper of Souls」が2014年3月25日にリリースされるのを機に,まさに仕切り直しとも言える「2.0.1」パッチを公開し,オークションハウスを撤廃しようとしている。果たして彼らの試みが,「Diablo III」の評価を押し上げることになるのか,興味深いところだ。
さて,欧米ゲーム業界には,ゲーム以外にも「仕切り直し」によって再生しようというビジネスがいくつかある。以下,「仕切り直し」というキーワードで表現できそうな,最近の欧米ゲーム業界の動きを紹介しよう。
■新たなビジネスモデルで再起を図る「OUYA」
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そんな「OUYA」が,新たに発表したのが「OUYA Everywhere」だ。詳細については発表されていないものの,これは「OUYA」向けに配信されているゲームアプリを,「OUYA」以外のハードウェアでも使えるようにする枠組みで,Mad Catzが発売しているAndroidベースのゲーム機「M.O.J.O.」がこの「OUYA Everywhere」の提供を受けることが発表されている。
「OUYA Everywhere」という新たなビジネスモデルによって仕切り直しを行った「OUYA」が再浮上できるかどうか,業界の注目が集まっている。
■クラウドゲーミング「OnLive」が新たなサービスを発表
時代を先取りしたクラウドゲーミングサービスとして2010年6月にローンチしたものの,2012年8月に破産状態に陥った「OnLive」については,本連載の第358回「大量解雇が起きたOnLiveと,クラウドゲーミングの未来」で紹介したとおりだ。その後も細々とサービスを継続していたOnLiveだが,最近新たに「Cloudlift」という新しいサービスを発表した。
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月額14.99ドルとなる「Cloudlift」は,プレイヤーのPCにインストールされたゲームソフトを認識し,それらと同じソフトを,ユーザーの使っているほかのPCやMac,Androidタブレットへストリーミングするというものだ。今のところ,「Batman: Arkham Origins」や「Saints Row IV」といった一部のタイトルしか対応していないが,すでに所有しているゲームをOnLiveで買い直す必要なく,クラウドゲーミングで楽しめるため,より手の出しやすいサービスになったとしている。
さらに,MMOタイトルの開発者向けに「OnLive Go」という新サービスを発表するなど,長い沈黙のあと,仕切り直しに向けて動き出したようだ。
■「DirectX 12」で,ゲーム開発者の期待に応えられるか
北米時間の3月20日,Microsoftが「DirectX」の最新版となる「DirectX 12」を発表するようだ。
もっとも,今のところ「DirectX 12」の詳細は明らかにはなっておらず,公開されたティザーサイトには,「2014年3月20日10:00」の文字と共に,AMD,Intel,NVIDIA,そしてQualcommのロゴが表示されているだけだ。Qualcommのロゴは,新たなDirectXがモバイルプラットフォームを重視していることをうかがわせるが,果たしてどのような発表が行われるのだろうか。
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DirectXが登場してから20年ほど経過しているが,Xboxのローンチとともに,それまで毎年のように行われていたアップデートは鈍化し,2002年に「DirectX 9」が公開されたあとは,2007年に「DirectX 10」,そして上記のように2009年に「DirectX 11」というペースでバージョンアップされてきた。
技術の進歩を考えれば,とても早いとは言えないペースであり,AMDが独自のグラフィックスAPI「Mantle」を立ち上げたり,Valveが「Steam」を通じてLinux化を推し進めたりなど,PCゲームにおける「DirectX」の地盤沈下は疑いのない事実になっていた。
この「DirectX 12」によって「PCゲーム開発者/ファンの信頼回復」という仕切り直しが行えるのか,発表に注目したい。
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