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22世紀少年


    伊藤賢治氏に最新アルバム「Re:Birth II -閃- / サ・ガ バトルアレンジ」のことを一から十まで聞いた


    「Re:Birth II -閃- / サ・ガ バトルアレンジ」
    2014年2月26日発売/全10曲収録/2857円+税
    サガ2秘宝伝説 GODDESS OF DESTINY
     スクウェア・エニックスミュージックは本日(2014年2月26日),「サガ」シリーズの楽曲を手がける作曲家・伊藤賢治氏が,かつての楽曲を自らアレンジし,バンド形式で演奏/収録したCDアルバム「Re:Birth II -閃- / サ・ガ バトルアレンジ」を発売した。

     ファンの投票により「閃」というサブタイトルが付けられた(関連記事)このアルバムは,いかなるコンセプトで作られ,どんな思いが込められているのか。CD発売に先駆けて本アルバムの楽曲が演奏されたライブ・コンサート「One Night Re:Barth Again」(関連記事)を終えた“イトケン”こと伊藤賢治氏に,そのあたりをたっぷりと聞いてみた。
     なお,インタビュー中に話題が余談へと転ずることもあるが,その部分も“イトケン節”を構成するものの手がかりとしてあえて残してある。“2014年のイトケン解説書”として読み解いていただきたい。

    最近4Gamerへの登場頻度が高い伊藤氏。アルバム収録とライブという大仕事を終えてやっと一息かと思いきや,複数のプロジェクトの作業でまだまだ多忙な日々が続いているとか。なお,アルバムのジャケット用に小林智美さんの描き下ろしたイラストについては「今回は母性的なまろやかな雰囲気を感じますね」と,コメントしていた

    「Re:Birth II -閃- / サ・ガ バトルアレンジ」公式サイト



    アレンジの極意はその瞬間の“閃き”

    バンドメンバーとのアンサンブルも意識


    4Gamer:
     本日はよろしくお願いいたします。
     まずはアルバム全体のコンセプトを,あらためて教えてください。

    伊藤賢治氏(以下,伊藤氏):
     2013年2月に開催したライブ「One Night Re:Birth」(関連記事)で「下水道」をアレンジするということが決まっていたので(笑)。そういった意味では,これまでのアルバム「Re:Birth」や「Re:Birth II」のように,バトル曲に縛られないバラエティに富んだものにしよう,というところから始まりましたね。

    4Gamer:
     では選曲の基準はどうなっているのでしょう?
     アンケートで選ばれた「下水道」以外の楽曲について聞かせてください。

    伊藤氏:
     バトル曲でまだピックアップされてなかったもの,それから自分が好きな曲がいくつかあったので,そのあたりが基準ですね。当然,アレンジでストックしてあったわけではないので,完成までには時間がかかってしまいました。

    4Gamer:
     コンサート「One Night Re:Birth」後のインタビューでは,2013年内に出せたらとおっしゃってましたね。

    伊藤氏:
     まあ一応,年度内には間に合ったかな(笑)。
     やはり一度出来上がったものに,再度手を入れるというのは,簡単なことじゃないんですよ。アレンジの作業は,原曲を聞き直すところから始まりますから。そこで,原曲の持ち味を踏襲したアレンジにするのか,あえて外した方向性にするのかを判断します。

    4Gamer:
     なるほど。では,アレンジを固めていく過程は,どんな感じなんでしょう?

    伊藤氏:
     まず,原曲を譜面に起こします。それにアレンジ用の装飾を加えていって,ラフなデモ曲を打ち込むんです。それを元に楽器ごとの収録を行っていきます。

    4Gamer:
     スタジオにバンドメンバーが全員こもって収録……というスタイルではないんですね。

    伊藤氏:
     ええ。まずはスタジオ収録が必要なドラムからスタートして,続いてベース,ギター……といったように,楽器ごとに順を追って収録していきました。といっても,すべてに僕が立ち会ったわけではなくて,ドラム以外の楽器は,奏者が自宅で録音したサウンドデータをネットで送ってもらっているんですよ。

    4Gamer:
     ええっ,それはオドロキです。

    伊藤氏:
     ラフな譜面を元にプレイヤー(奏者)にいくつかのパターンを弾いてもらって,そこからチョイスしてトラックメイクをしていく方式を取りました。CDのメンバーは誰もが凄腕なのに加えて,曲を自分で作れるからこそ可能でしたね。プレイヤーが「ここはこのフレーズで!」と自信を持って送ってくる場合もあるので,かなりの共同作業になっていますね。
     しかも,そうやって組み上げていくほうが,僕が各パートの音を聴きながら作業できるので,トータルバランスを確認しやすいんです。

    4Gamer:
     そうして組み上げていったトラックに,最終的に伊藤さんがメロディやバッキングのピアノを加えて完成,と。

    伊藤氏:
     はい。ですから,みんなでジャーン! と音を出して合わせたのは,ライブのリハーサルが最初で。だからこそ,あの完成度が出せたというのはあります。

    4Gamer:
     なるほど。これまで数度にわたるCD収録やライブを,ほぼ同じメンバーで行ってきたことで,伊藤さんの楽曲に対する理解度もだいぶ深まっているということですか。

    伊藤氏:
     それはありますね。ギターの寺前君はバンドマスター的な立ち位置なんですけど,彼にはかなり助けられています。年齢やキャリアの差は関係なく,ぶっちゃけた意見をぶつけあって一緒にやろうと。
     むしろステージングに関しては,彼のほうが経験値が圧倒的に高いので,僕のほうがいろいろと教わっている感じです。

    4Gamer:
     ライブをするごとに伊藤さんのステージングが堂に入ってきてますよね。でも,どこかはにかんだ様子が薄まっていくのは寂しい気もします(笑)。

    伊藤氏:
     参考にさせていただきます(笑)。

    4Gamer:
     話題をアレンジに戻しますが,そうやって一曲を仕上げられるのに,だいたいどれくらい時間かかるものなんでしょうか。

    伊藤氏:
     原曲を聴いてからラフなアレンジを打ち込み終えるまで,だいたい2~3日ですね。それを各パートのプレイヤーに渡して演奏をしてもらうので,完成までにはもう少し時間がかかります。

    4Gamer:
     2~3日と聞くと短くも思えるんですが,わずか数分のためにそれだけの時間をかけてるってことですよね。

    伊藤氏:
     そうですね。いろいろなアレンジの方向性が考えられるので,どれをチョイスするかはその場の瞬間的な考えで変わります。だから今回のアルバムも,あくまでも“2013年のベストに近いベターなアレンジ”であって,日が経てば,またちょっと違ったアレンジを施すかもしれません。まさに「閃き」ですよね(笑)。

    4Gamer:
     ここまでライブを重ねてきたことで,アレンジをする際に考え方が変わってきた部分なんかはありますか?

    伊藤氏:
     今までだったら,もうちょっと自己中心的なアレンジをしていたはずなんですけど,考え方がアンサンブル的に変わってきました。作業をしていると,例えばベースを打ち込むんだったら榎本(敦)くんのプレイだったりフレーズだったりっていうのが見えてくるんですよね。
     もちろん本人じゃないから自分が演奏する場合の手癖もあるんだけど,「彼らだったらこう演奏するだろう」みたいなイメージは沸くようになってきています。

    4Gamer:
     同時に,ファンに向けたサービス精神に溢れた作品であるという印象も受けました。

    伊藤氏:
     それもありますね。「ファンの皆さんが望むものを提供する」という意識が今回はとくに強かったので,そう思っていただけたのなら嬉しいです。ロックアレンジということで敬遠している方もいるかもしれませんが,別の形も考えていますので,「ひとまず,今回はこちらでいかがですか?」と。

    4Gamer:
     ふと思ったのですが,ゲームに使われる原曲って,基本ループするじゃないですか。それを5分程度のひとつの楽曲にまたアレンジするのに,苦労はなかったのでしょうか。

    伊藤氏:
     苦労というほどではないですが,どうかっこ良く終わらせるかは意識しました。それこそギターが跳ねながら終わるとか,キーボードがグリッサンドを入れながら終わるとかっていう,ステージでの映り方みたいなものも含めて,「Fine」(フィーネ)には,けっこうこだわっています。



    アルバム収録曲それぞれについて

    伊藤氏にコンセプトを聞く


     ここからは伊藤氏に,CD収録の楽曲ごとについて聞いている。インタビューは,事前にサンプル版を聴いたうえで筆者が感想,および質問を投げかけ,それに伊藤氏が答えるスタイルだ。
     そのため,まだCDを購入していない方は,公式サイトで各曲を試聴しつつ,読み進めていただけると嬉しい。

    ●01.必殺の一撃~死闘の果てに メドレー from Sa・Ga2 秘宝伝説

    4Gamer:
     原曲がゲームボーイということもあって,アンサンブルがほぼそのままアレンジされていて,響きがメドレーの原曲に近い印象を受けました。それと,これを一曲目に持ってきたというのは,伊藤さんの初のゲーム楽曲だからなのでしょうか?

    伊藤氏:
     ええ,時間軸でそろえたのは,このCDを聞いた方に「ああ,そうだねこうやって年を取っていったんだよね」と感じてもらえるようにしたかったからです。「七英雄バトル」だけが,ちょっと例外ですけど。

    4Gamer:
     イントロからつかみにくるので,アルバムの1曲目としては最適ですね。そして原曲を改めて聴き直してみると,当時からすさまじい完成度だったのだな,ということを再確認できました。

    伊藤氏:
     ありがとうございます。当時はもう,何もかもが初めてで。しかも三和音でどうやってビートを出すんだとすごく悩みましたね。普通のダンジョンとかテーマ曲だったら和声の組み方とかっていうのでカバーはできるんですけれど,ドラムもないのにどうやってビートを表現するんだと,さんざん試行錯誤した覚えがあります。

    4Gamer:
     ビート感というのも,伊藤さんの楽曲にとっては重要なファクターですよね。

    伊藤氏:
     当時の楽曲は,アクセントだったりデュレーション(音の長さ)を,「ター」にするか「タッ」にするか,あるいは,「タッタッタッタッ」って一定にするか,「ターダッターダッ」て一定じゃないビートにするかで,ノリが違ってくるんですね。
     ゲームボーイは三和音しかなくて表現力が足りなかったので,そんな研究はさんざんしたような気がしますね。


    ●02.バトル 2 from Romancing Sa・Ga

    4Gamer:
     頭からガツンと来る,ヴァイオリンが奏でるメロディにつきますね。ヴァイオリンがよく“歌っている”印象があるんですが,土屋(玲子)さんには何か指示を?

    伊藤氏:
     何度かお手合わせをお願いしていて,僕の癖は分かっていると思うので,あえてお任せしましたね。僕は,口が酸っぱくなるほど「バトル曲は苦手,バラードが好き」って言ってるんですけど,そういう気持ちを最後のピアノソロに込めています。実は,このピアノソロ自体が,この曲の原型なんですよ。

    4Gamer:
     なるほど。なんかロックバンドの「X」,というかYOSHIKIさんっぽいテイストというか(笑)。

    伊藤氏:
     ノリが近いですよね。実は昔,まだ僕がスクウェアの社員だったころに,「チョコボレーシング」のレコーディングでロサンゼルスに行ったとき,YOSHIKIさんご本人にお会いして,そういうお話をしたことがあるんです。彼もピアニストだったので,同じピアノ弾きとして話が弾んで,「この方は本当にピアノ好きな方なんだなぁ」と思いました。

    4Gamer:
     意外な接点があったんですねぇ。


    ●03.下水道 from Romancing Sa・Ga

    4Gamer:
     全体的にビートの“跳ねる”アレンジですね。このファンクなノリはどこから来たんだろうと不思議に思っていたのですが……。

    伊藤氏:
     ラジオの発言ですね(笑)。

    4Gamer:
     そうです(笑)。先日伊藤さんが出演されたラジオ番組「電磁マシマシ」(※編注:元ナムコの佐野電磁氏がパーソナリティを務めるラジオ番組。伊藤氏も準レギュラー的に出演中。CBCラジオ及び,Ustreamにて毎週土曜日21:00~放送中)で,「太陽にほえろ」のメインテーマがモチーフだったという衝撃的な発言があって。

    伊藤氏:
     ふふふ(笑)。でも実は,けっこう悩んだ上に生まれた方向性だったんです。もともとがピコピコしたテクノな曲調だったので,バンドスコア化をどうしようとひと悩みして。
     「ミンストレルソング」版のシンセ調の音を持ってきたりもしたんですが,ふとオルガンに変えてみたらフレーズにハマって。

    4Gamer:
     こねくり回しているうちにファンクになった,と。

    伊藤氏:
     そうですね。最初は歌もの……例えば,スガシカオさんや山崎まさよしさんあたりの楽曲のイメージで,とギタリストやベーシストにお願いしたんですけど,自分のキーボードを入れる段になって,「これ,太陽にほえろに近いかも」と気づきました。ちなみにギターは8トラックくらいと分厚く重なってます。

    4Gamer:
     メロディアスな原曲が跳ねる感じに仕上がっていますよね。ここまで来たなら,ブラスが入ったバージョンも聴いてみたくなってきました。


    ●04.クジンシーとの戦い from Romancing Sa・Ga

    4Gamer:
     原曲はアルペジオが印象的で,そこで曲の盛り上がりを作っていく構成です。それが,メロディ重視な感じのアレンジになってる印象ですね。

    伊藤氏:
     この曲に関しては,アレンジどうこうというよりも,スクエニさんのある女性スタッフの熱烈なリクエストがあって選ばれたんですよ。とあるイベントの時に詰め寄られて,「なんでクジンシーが入ってないんだ!」と(笑)。

    4Gamer:
     猛烈な直談判が(笑)。

    伊藤氏:
     ほんと,半分以上の理由がそれなんですよ。正直,僕の中では「中ボス曲の一つ」くらいにしか思っていなかったんです。でも,このアルバムはサガファンに向けて作っていることもありますから,自分の好みだけで選んでいてはダメだろうと。

    4Gamer:
     サガファンからのリクエストは,ほかにどんなものがありました?

    伊藤氏:
     意外に多かったのが,サガフロのエミリアやT260のラストバトル。ジャンルがプログレだったりテクノだったりするので,ちょっとバンド編成では難しいかもしれませんけど,思いは伝わってます。

    4Gamer:
     では今後もひょっとしたら,ファンがリクエストしたものがなんらかの形で実現されることもあるかもしれませんね。そうやってアレンジ曲のレパートリーを増やしていって,ゆくゆくは「イトケン24時間耐久ライブ」を(笑)。

    伊藤氏:
     オールナイトで(笑)。もしそれが実現できたら,ゲーム音楽で唯一ですから,やってみたいって気はありますね。体力が続くのであれば(笑)。


    ●05.バトル#1 from Saga Frontier
    ●06.バトル#5 from Saga Frontier


    伊藤氏:
     これも意外にリクエストが多かった曲です。

    4Gamer:
     原曲がPlayStation用のタイトルということもあって,原曲に近いストレートなアレンジですね。BPM(テンポ)も,ほぼほぼ原曲のままで。

    伊藤氏:
     内蔵音源とはいえ,PlayStationは同時発音数などが自分の表現しやすい仕組みになっていたので,自分が頭でイメージしていたのと近いものが表現できていたんです。
     ですから,またそれをアレンジし直すっていうのも,ちょっと違うのかなと。原曲を踏襲しつつ,よりリアルにするというのが,今回のコンセプトです。

    4Gamer:
     アレンジを経た今だから伺いますが,原曲を作っているときに伊藤さんの頭で鳴っていたのは,このアレンジバージョンに近かったのでしょうか?

    伊藤氏:
     そうですね。頭の中ではバンドが演奏してました。
     ですが,自分やバンドが実際に演奏するところまでは考えてなかったので,ちょっと人間技じゃできないハイレベルな演奏まで突き詰めてるところがありますけど。

    4Gamer:
     すると,バンドメンバーの方が収録時に「これはムリです!」と音を上げたりしたことも?

    伊藤氏:
     それが,彼らは音を上げないんですよ(笑)。若いこともあるんでしょうが,吸収力や対応力が非常に高くて。
     こぼれ話ですけど,ドラムの山内(優)くんを,僕が主題歌を手がけている「乖離性ミリオンアーサー」(歌:水樹奈々さん)の収録で起用したんです。ギターとベースは奈々さんのバックバンドでいつも演奏されているベテランの方だったんですが,その方達も山内君の演奏に感心してましたね。なんか自分までが褒められているようで,嬉しかったです。

    4Gamer:
     アルバムならともかく,ライブでのドラム演奏を聴いても「これ打ち込みでしょ?」と勘違いするほど,手数足数が多いですよね。

    伊藤氏:
     ええ。今後同じようなプロジェクトをする場合,よほどのことが無い限り同じメンバーで一緒にやっていくだろうし,僕自身も彼らと一緒にやってクオリティを高めていきたいと思っています。



    ●07.ラストバトル-アセルス- from Saga Frontier

    4Gamer:
     シンフォニックな出だしの原曲が,ヴァイオリンとピアノの掛け合いになっているのが新鮮でした。

    伊藤氏:
     はい。もともとアセルスの世界観が,「ベルサイユのばら」的な耽美系だったので,元の曲とは線を引いてもいいかなと。端的にいうと,パブロ・デ・サラサーテのヴァイオリン曲「ツィゴイネルワイゼン」的なものを目指しました。

    4Gamer:
     土屋さんのヴァイオリンの音色がこの曲だけなんともエロいと感じたのですが,耽美というキーワードで納得しました。ところで,原曲との比較ということだと,ザッザカ ザッザカカっていう刻みのスネアが印象的でしたが,こちらはどういったオーダーをされたんですか?

    伊藤氏:
     8ビートのリズムにアレンジはしていますが,ハイハットの刻みを原曲に近いニュアンスにしてね,というリクエストはしました。アルバムを通じて,どこかに原曲のフレーズは残すようにしています。

    4Gamer:
     そこがまさにアレンジの妙なんですね。

    伊藤氏:
     ええ。さらに言うと,ほとんどの曲には楽器ごとのソロパートを用意しているんですが,そこでプレイヤーの腕前をアピールしてもらおうって狙いで。「僕の楽曲を踏み台にしてもいいから,自分の色を出して」というのは伝えてあります(笑)。

    4Gamer:
     そこがまたバンド形式でのアレンジでの面白みなわけですね。


    ●08.呼び醒まされた記憶 from Romancing Sa・Ga -Minstrel Song-

    4Gamer:
     この曲こそ“よく生演奏できたで賞”ですよね。アレンジ的にはほぼ原曲どおりですけど,あんなに音符の詰まった曲を人間が生演奏できるのか! というところが驚きでした。

    伊藤氏:
     約2年前のライブ「THE NEXT STAGE ~gentle echo meeting 3~」で初演奏したものなんですけど,リハであわせたところ,あっさり演奏できちゃったので驚いた記憶があります。彼らのすごさを初めて感じた瞬間ですね。
     それと,この曲は意外と女性人気が高いようです。イントロのとき客席から「キャー!」って声が聞こえましたから……ただまあ,シュラハとの戦いで流れる曲なので,もしかするとキャラクター人気かもしれないです(笑)。

    4Gamer:
     ところで,この曲もそうですが,伊藤さんの弾くオルガンの音色が印象的ですよね。メロディを取る際は,“イトケンリード”とでも言うべき特徴的な音色があったり。

    伊藤氏:
     武器としての“自分の音色”を印象づけるために,あえて統一することは考えていますね。


    ●09.邪聖の旋律 from Romancing Sa・Ga -Minstrel Song-

    4Gamer:
     こちらも出だしを聴いて真っ先に,意外だなという印象を受けました。原曲はパイプオルガンとコーラスだったのが,ヴァイオリンになっているのは,どういった意図なんでしょう。

    伊藤氏:
     クラシカルなテイストはあまり消さないで,それでもロックバンドというところでどうすればいいのかなって,バランスを取りながらアレンジしていった結果ですね。
     ほかの原曲はまずロックテイストありきなんですけど,この曲は“どクラシック”なので,だったらもうちょっとクラシックに攻めてみようと。アレンジが完成したときの達成感は,自分で思っていたより大きかったですね。

    4Gamer:
     途中のダンダン! ダダダダダン! ってブレイクは,原曲にあるティンパニーのサウンドをモチーフにしていますよね?

    伊藤氏:
     そうですそうです。先ほどいったように,アレンジだからといって原曲からあまりにかけ離れたものだと,ファンの方ほど難色を示すことが多いので。


    ●10.七英雄バトル from Romancing Sa・Ga 2

    4Gamer:
     メロディが幾重にも重なり合って,実に伊藤さんらしい曲だと思います。なんというか“ザ・イトケン節”だなと。ところで,この「七英雄バトル」は,前作「Re:Birth II」でジャズアレンジを施した曲を,再度ロックアレンジにしています。同じ曲を作曲者自身が2回アレンジするというのは,どんな心境だったんでしょうか。

    伊藤氏:
     実は新鮮な気持ちだったんですよ。というのも,もともとの七英雄バトルはピアノの音源で作っていたので,バラード的な感じだったんです。それを踏まえてジャズアレンジをしてみたら,まあバッキリと賛否両論でした(笑)。
     その反応がある意味心地よかったので,だったら今回のアルバムでも一番最後のトラックに入れて,最後の曲として意識してもらおうということです。

    4Gamer:
     なるほど,そんな意図があるんですね。

    伊藤氏:
     ロマサガ2を作っていた当時を振り返ると,けっこうスランプに陥ってたんですよ。1は勢いで乗り切れたんですが,その分“燃え尽き症候群”じゃないですけど,空っぽになった引き出しから,何を取り出せばいいんだと悩んでました。それがあっての七英雄やクジンシーとの戦いなので,自分の中で小さい頃から培ってきた“ベタな部分”でしか作られていないんです。自分で無意識に縛りを作っていたというか。
     ですから次作のロマサガ3では「吹っ切れなくちゃ」ともがきましたね。開発スタッフからのアドバイスもあって,エレキギターを取り入れたり。それで完成したのが「四魔貴族バトル」で。

    4Gamer:
     ということは七英雄バトルは,伊藤さんの根っこにあるものが素直に出てる楽曲なんでしょうね。ザ・イトケン節というのもあながち間違いじゃない(笑)。

    伊藤氏:
     ええ。そうだと思います。


    1800人によって証明されたライブの熱量

    次なるステップはアルバムとライブの定期化!?


    4Gamer:
     さて,One Night Re:Birth Againから少し時間が経った今,伊藤さんの中にどんな気持ちが残っていますか?

    伊藤氏:
     一つのタイトルで,自分の名義で,しかもインストゥルメンタルのゲーム音楽という形で1800人を集めることができたというのは,一つの“証明”になったと思います。もちろん,いろんな方々のサボートがあったからできたことなんですが。これなら今後もきっと続けられるだろうという自信や期待もあるし,次のステップも見えやすいんじゃないかなと。
     「FINAL FANTASY」シリーズや「ドラゴンクエスト」シリーズは特別としても,多くのゲーム音楽コンサートがオーケストラで行われている中,こういったロックバンドスタイルが確立できたというのも大きな意味があると思います。

    4Gamer:
     1800人という観客が集まった事実は揺るぎないですものね。では,次のステージへのイメージはありますか?

    伊藤氏:
     まずは,東京以外でもやりたいという希望があります。それと,会場の大きさはともかく,中野サンプラザといった由緒あるホールでやってみたいですね。

    4Gamer:
     東名阪+札幌福岡くらいはツアーで回れそうですよね。あとはライブ版のCDですとか。

    伊藤氏:
     ライブのDVD化は,すごく望まれていますね。とくに今回は映像配信もしなかったので,そういったご要望が多いのは把握しています。

    4Gamer:
     ベストはやはり,実際に会場に足を運んでその場の空気と共に体感することなんでしょうけど,事情があって行けないなら,せめて映像で! という声は多いですよね。
     ところで,おそらく次のライブのタイミングも検討されていると思うのですが,時期的にはいつ頃になりそうですか?

    伊藤氏:
     決まった予定があるわけではないんですが,ここのところ大体毎年1~2月にやっているので,それぐらいのペースをキープしたいですね。それと,バンドとは別にアコースティックなものもやりたいと思っています。

    4Gamer:
     今回のアルバムを聴いて,伊藤さんのピアノと土屋さんのヴァイオリンだけのコンサートなんかも見てみたいと思いました。

    伊藤氏:
     あーなるほど,スピンオフとして。(スタッフの方に)メモっといてね(笑)。

    4Gamer:
     期待しています!
     では最後に,読者に向けて「これだけは言っておきたい!」ということがあれば,お願いします。

    伊藤氏:
     「Re:Birth」として三作のアルバムを作ってきまたしたが,皆さんの希望とスクエニの期待があるのならば,僕としてはずっと続けていきたいコンテンツになりました。
     本職のアーティストが,新譜を出すごとにライブを行うような展開を,体力の続く限りやっていきたい気持ちはあります。まずは今回の「閃」を聴いていただいて,その次をのんびり楽しみにしていてください。

    4Gamer:
     ありがとうございました。

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