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22世紀少年


    Iris Pro 5200搭載の超小型ベアボーンが持つ性能をKaveri搭載機と比較してみる

    PCハードウェアに興味がある読者なら,Intelが提唱している超小型PCベアボーンキット「NUC」(Next Unit of Computing)が国内の自作PC市場で一定の人気を集めていることを知っているかもしれない。手のひらサイズに近いコンパクトさが魅力のPC,というか正確にはベアボーンキット(≒半完成品)だ。ただ,Intelが提唱していることもあってか(?),残念ながら3Dグラフィックス性能は貧弱で,ゲーマーは手を出しづらいというのが正直なところだった。

     そんな超小型PCベアボーン市場には,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)も「BRIX」(ブリックス)という製品ブランドで参入しているのだが,同社は現在,ゲーマーをターゲットにした製品「BRIX Pro」(型番:GB-BXi5-4570R,以下型番表記)を準備中だ。これは,Haswell世代の統合型グラフィックス機能における最上位モデル「Intel Iris Pro Graphics 5200」(以下,Iris Pro 5200)を搭載するのが大きな特徴だが,果たして本製品は,登場後,高い注目を集め続けているAMDの新世代APUと戦えるだけの性能を持っているのだろうか。
     今回4Gamerでは,国内展開未定というステータスながら,GB-BXi5-4570Rを日本ギガバイトから入手できたので,「超小型ゲームPC」としての可能性を探ってみたいと思う。


    国内発売になれば初となるi5-4570R搭載ベアボーン

    手のひらサイズに高いスペックを集積


    入手したGB-BXi5-4570R。本体は黒一色のモデルもあるようだが,今回入手したのは赤と黒のツートン型だ
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
     最初にBRIXのこれまでをざっくり振り返っておくと,初期はIvy Bridgeマイクロアーキテクチャがべースとなる第3世代Coreプロセッサ搭載モデルでスタートし,2014年1月時点では,Haswellベースの第4世代Coreプロセッサベースに切り替わっている。BRIX Proは,そんなBRIXシリーズのなかでも3D性能と拡張性を追求したモデルという位置づけで,発表時点の最上位モデルは4コア8スレッド仕様の「Core i7-4770R」を搭載した「GB-BXi7-4770R」。今回入手したGB-BXi5-4570Rは,4コア4スレッド仕様の「Core i5-4570R」(以下,i5-4570R)を搭載する,“上から2番め”のモデルとなる。

     ちなみにGIGABYTEは,1月末に世界市場に向け,Richland世代のノートPC向けAMD A-Series APU「A8-5557M」と,AMD未発表のノートPC向け単体GPU「Radeon R9 M275X」を組み合わせた小型PCベアボーンを「BRIX Gaming」(型番:GB-BXA8G-8890)として発表済みだ。その名のとおり,GIGABYTEがゲーマー向けとして訴求しているのはどうやらそちらのようだが,残念ながら,4Gamerでもまだ入手できていない。

    GIGABYTEロゴがプリントされた上面パネルはピアノブラック調で,好き嫌いが分かれそうだ。電源ボタンは本体向かって右手前側に用意される
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
     というわけでGB-BXi5-4570Rだが,そのサイズは112(W)×114(D)×62(H)mm(※突起部含まず)。設置面積はNUCシリーズとほぼ同じであり,十分に「手のひらサイズ」と述べていいように思う。なお,メモリモジュール2枚と2.5インチSSD搭載時の本体重量は実測876gだった。
     付属品は下に示したとおりで,本体のほか,実測で80(W)×150(D)×22(H)mmと平べったいACアダプター,ドライバCD-ROMや簡易マニュアル,ネジ類,ディスプレイの背面に取り付けるためのVESAマウントキットが用意されている。

    GB-BXi5-4570Rの付属品一覧。ACアダプターは19V 7.1A(約135W)の出力を持っており,重量は実測約400gだった。VESAマウントキットは100×100mm仕様で,同仕様に沿ったVESAマウントホールが採用されるディスプレイなら,このマウントキットを使えば,GB-BXi5-4570Rを背面に取り付けられる
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた

    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
    本体前面のインタフェース。必要最低限といったところ
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
    主要なインタフェース群は背面に集約されている。なお,写真で左端に見える穴は,盗難防止用ロックの業界標準である「Kensington Lock」用。HDMI Type A端子の左に見えるのはACアダプター接続端子である。上下の黒い部分は吸排気孔となり,とくに上は排気孔となるので,塞ぐようにモノを置いたりしてはならない
     本体前面のインタフェースは,USB 3.0×2と,3.5mmステレオミニピン型のヘッドフォン出力およびS/PDIF出力兼用端子。マイク入力には対応しない……というか実のところ,GB-BXi5-4570Rはサウンド入力そのものをサポートしていないので,ゲームでボイスチャットを行いたいのであれば,USB接続型のヘッドセットや,USBサウンドデバイスの用意が必須となる。

     本体背面のインタフェースもチェックしておこう。まず,ビデオ出力はMini DisplayPortとHDMI Type Aの2系統で,デュアルディスプレイ対応。USB 3.0はこちらにも2ポート用意されている。
     有線LANは1000BASE-T×1。標準でIEEE 802.11a/g/n/ac&Bluetooth 4.0対応のmini PCI Expressカードモジュールを搭載しているため,無線LANも利用可能だ。

     なお,背面上部にある黒い部分はファンに直結する排気孔で,設置にあたって,ここを塞ぐのはご法度となる。それ以外の本体の穴は主に吸気孔として機能しているようだ。

    両サイドの吸気孔には,パンチ穴の空いた黒いパネルや斜めのスリットが使われている。パンチ穴が空いた黒いパネルはマザーボード上面の冷却システムに空気を送り込むため,斜めのスリットはマザーボードの下面を冷やすためのもののようだ
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた

     さて,冒頭でGB-BXi5-4570Rはベアボーンキットと述べたが,CPUのi5-4570Rはマザーボードに実装済み。キットに含まれていないのは,最大2枚のDDR3L SO-DIMMと,mSATA接続のカード型SSD,あるいは2.5インチストレージデバイスとOSだけである。
     なお,i5-4670Rが低電圧版のDDR3L-1333&1600しかサポートしない関係で,対応メモリモジュールはPC3L-10600およびPC3L-12800のみとなる。標準電圧版SO-DIMMは利用できないので,この点は注意が必要だろう。一方のストレージデバイスは排他ではないため,最大では1枚+1台構成が可能だ。

    底板のゴム足にあるビス4本を抜いて,(黄色矢印で示した)ノブをつまんで引き上げると,底板を取り外せる
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
     コンパクトサイズなので組み込みは面倒で難しいと思うかもしれないが,心配はいらない。徹底的に分解しようというならともかく,メモリモジュールとストレージデバイスを取り付けるだけなら短時間で行えるからである。
     筐体を開けるには,本体底面のビス4本を抜いて,右の写真で右上(=本体底面側から見て左手前)のノブをつまんで引き上げればOK。2つのSO-DIMMスロットとmSATA用のMini PCI Expressスロットがマザーボード側,9mm厚に対応した2.5インチストレージマウンタが底板側に用意されている。2.5インチストレージ用のSerial ATAインタフェースは専用ケーブルで用意されており,入手した個体だと,移動中に筐体内で暴れないよう,SO-DIMMスロットにテープで留められていた。

    底板を外したところ。マザーボード側にSO-DIMMスロット×2と空きMini PCI Expressスロットが用意されている。mSATAモジュールは無線LAN&Bluetoothコンボモジュールを覆うような格好で取り付けるわけだ。底板部に見える黒いところが2.5インチストレージデバイスのマウンタである
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた

    マザーボードを筐体から取り出したところ。無線LANのアンテナは筐体が兼ねていることも見て取れよう(※技適との兼ね合いから通電にあたっては無線LANモジュールを取り外している)
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
     GB-BXi5-4570RをPCとして使ううえでは,以下の行為はまったく不要だが,せっかくなので,マザーボードを取り出してみよう。
     マザーボードは,筐体に対し,2本のビスで留められていた。そして取り外すと,マザーボードの“裏側”は,銅製ヒートシンクと遠心型のブロワーファンユニットが一体化されたCPUクーラーで,全体の5分の4程度が覆われているのが分かる。クーラーを外せばCPUに到達できるはずだが,ヒートシンクとマザーボードの結合は相当に強固で,無理に外そうとすると,CPUごと剥がれてしまいかねない――i5-4570RはBGAパッケージなので,剥がれてしまったら取り返しがつかない――ため,クーラーの取り外しは断念した。

    ブロワーファンを取り外したところ
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた

    これは2013年9月15日の記事で紹介した,Iris Pro 5200統合のノートPC向けCPU「Core i7-4750HQ」。あくまでも推測だが,i5-4670Rも同じような外観のCPUパッケージを採用している可能性が高い
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
     なお,姿をチェックできなかったi5-4570Rだが,これは4コア4スレッド仕様のCPUで,共有L3キャッシュ容量は4MB。CPUコアの動作クロックは定格2.7GHz,最大3.2GHz。メモリコントローラは前述のとおりデュアルチャネルDDR3L-1333&1600対応となる。
     統合型グラフィックス機能となるIris Pro 5200は,動作クロックがベース200MHz,最大1.15GHzだ。

     以上,GB-BXi5-4570Rの内部構造は非常にシンプルなものになっているとまとめていいだろう。半導体技術の進歩が,これほど小さいサイズのPCを,シンプルに実現できるようにしているのだと思うとなかなか感慨深い。


    A10-7850K搭載のMini-ITXシステムと

    その3Dゲーム性能を比較してみる


     GB-BXi5-4570Rを概観したところで,テストのセットアップに入っていきたい。
     今回,比較対象としては,Kaveri世代のAMD A-Series APUである「A10-7850K」を,日本AMDから貸し出してもらって用意した。マザーボードは,米AMD本社がレビュワーに推奨していたもののなかから,ASRock製のA88Xチップセット搭載Mini-ITXモデル「FM2A88X-ITX+」を独自に入手して組み合わせている。要は,「A10-7850Kベースの小型PC」と比較しようというわけだ。

     i5-4670RとA10-7850Kでは,統合型GPUのスペックがかなり異なるが,念のため,両方のスペックを表1にまとめてみたので,参考にしてほしい。


     なお,A10-7850Kのテストにあたっては,Kingston Technology製の「HyperX Performance」に属するPC3-19200 DDR3 SDRAMの容量4GBモジュール2枚セット「KHX24C11T2K2/8X」を用意したのだが,これがあっさりとデュアルチャネルDDR3-2400で動作してしまったことを報告しておきたい。FM2A88X-ITX+はメモリ設定としてIntelの「XMP」(eXtreme Memory Profile,JEDEC標準のSPDに格納できない設定を記録する拡張仕様の1つ)をサポートしており,BIOS(UEFI)からXMPを選択するだけでDDR3-2400動作したのである。
     PC3-19200モジュールを用意してもDDR3-2400動作しなかった先のA10-7850Kレビュー時とは,そもそもモジュールあたりの容量もマザーボードも異なるのであくまでも参考情報となるが,今回,A10-7850KはデュアルチャネルDDR3-2400動作となるので,その点はご注意を。

     そのほかテスト環境は表2,3を参照してもらえればと思う。GB-BXi5-4570RはBIOSにオーバークロック関係の設定がまったく用意されていないため,GB-BXi5-4570Rのメモリ設定はSPD情報のままとなっている。


    GB-BXi5-4570RのBIOS設定は非常にシンプルで,よくあるノートPC並みといった雰囲気になっていた
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
     テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション15.0準拠。解像度は1280×720ドット,1600×900ドット,1920×1080ドットの3パターンとする一方,テストの主役が統合型グラフィックス機能ということもあり,「高負荷設定」およびそれに準拠するテストは省き,「エントリー設定」を選択できるものは積極的にエントリー設定を,そうでないものは「標準設定」を選択することにした。ただし,「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」の公式ベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)では,スコアを見てみたい読者が多いと予想されることから,「最高品質」でもテストを行うことにしている。

     あと1つ追記しておくと,4Gamerではグラフィックスカードのレビューにおいて,CPUの自動クロックアップ機能を無効化することがよくあるが,今回はPCシステムの比較ということで,より標準的な使い方を想定し,「Intel Turbo Boost TEchnology」および「AMD Turbo CORE Technology」はいずれも有効化した状態のまま変更していない。


    非DirectX 11環境向けな傾向を示すIris Pro 5200

    総じて「健闘している」といえる結果に


     では,「3DMark」(Version 1.2.250)から見ていくことにしよう。今回はエントリークラス以下の3D性能を持つPCが主役ということで,いつもの「Fire Strike」だけでなく,DirectX 10ベースの「Cloud Gate」も実行することにした。
     その結果がグラフ1で,GB-BXi5-4570RはCloud GateでA10-7850Kシステムに対して24%高いスコアを示す一方,Fire Strikeでは約84%のスコアに留まっている。


     3DMarkは,GPU性能を問う「Graphics test」と,CPU性能を問う「Physics test」に大別される。そのため,Cloud GateではCPUコア性能の高さでi5-4670RがA10-7850Kを圧倒した……と思いがちだが,Cloud Gateのスコア詳細を見てみるとPhysics testで約36%高いスコアを示すGB-BXi5-4570Rが,Graphics testでも約14%高いスコアを示しているのが分かる。
     「Graphics Core Next」アーキテクチャを採用するGPUは,どちらかというとDirectX 11に“寄った”特性を持っているので,その分,DirectX 10ベースのCloud GateではIris Pro 5200が相対的に優勢となるのだろう。


     というわけでFire Strikeのスコア詳細を見てみると,総合スコアと同様,GB-BXi5-4570RはA10-7850Kシステムの約84%という結果に落ち着いている(グラフ3)。


     続いてグラフ4は,エントリー設定で実行した「Battlefield 4」(以下,BF4)のテスト結果だ。ここではDirectX 11モードでの比較となるが,テストしたいずれの解像度においても,GB-BXi5-4570RはA10-7850Kシステム比で大きく離されている。とくに,1280×720ドットで,A10-7850Kシステムが平均50fpsを超えており,「とても快適」とまでは言えないものの,プレイ可能な水準を確保しているのに対し,GB-BXi5-4570Rが40fps弱,A10-7850Kシステム比にして約75%に留まっているのは,やはりインパクトが大きい。AMD独自のグラフィックスAPI「Mantle」を利用すれば,A10-7850Kはフレームレートのさらなる引き上げを図れるわけで(関連記事),この違いは大きいと言わざるを得ないだろう。
     GB-BXi5-4570RでBF4を快適にプレイしたいということであれば,エントリー設定よりさらにグラフィックス設定を落とす必要がある印象だ。


     BFよりさらに“重い”タイトルである「Crysis 3」のスコアがグラフ5である。ここでもエントリー設定でテストを行っているが,ご覧のとおり,テストに用いた2つのシステムでは,いずれもプレイアブルなフレームレートが得られなかった。
     興味深いのは,DirectX 11をフルに使うCrysis 3だとA10-7850Kが有利なはずなのに,実際の平均フレームレートはGB-BXi5-4570Rのほうがやや高い点だ。そのスコア差は7~16%程度と,意外に大きい。

     その理由は定かでないが,このクラスのシステムにとって,Crysis 3のエントリー設定はGPU負荷よりもCPU負荷のほうが高く,それがこういう結果を生んでいる可能性はあるかもしれない。


     グラフ6はエントリークラスのGPUでもプレイアブルなフレームレートを期待できる「BioShock Infinite」の「High」設定におけるテスト結果となる。ここでは,1280×720ドットだとA10-7850Kシステムの約93%というスコアに留まるGB-BXi5-4570Rが,1600×900ドット以上では逆転し,7~9%程度のスコア差を付けている。
     ただ,その理由は何とも言えない。Crysis 3とは傾向がやや異なるため,「基本的にDirectX 10ベースとなるHigh設定のBioShock Infiniteでは,Iris Pro 5200で組み合わせられているとされるeDRAMが高解像度環境における優位性を生み出した」という可能性は考えられるのだが,いかんせんIntelがeDRAMとされるメモリの用途や仕様を明らかにしてくれていないので,推測の域を出ないのだ。


     DirectX 9c世代のタイトルである「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)を用い,エントリー設定で実行したときのスコアをまとめたものがグラフ7となる。
     ここで,GB-BXi5-4570RとA10-7850Kシステムは,ほぼ互角といえるスコアにまとまった。あえていえば,1280×720ドットでがGB-BXi5-4570Rが優勢,1920×1080ドットでA10-7850Kシステムが優勢の結果となっているので,Crysis 3やBioShock Infiniteとは逆の傾向が出ているといえるが,ここは「誤差範囲」としたほうがフェアではないかと思う。
     いずれにせよ,1280×720ドットのエントリー設定なら,Skyrimもまずまずプレイできるレベルにあると述べていいのではなかろうか。


     新生FFXIV キャラ編のスコアは「標準品質(デスクトップPC)」から見ていこう。新生FFXIV キャラ編のテストでは,グラフ画像をクリックすると平均フレームレートベースのグラフを表示するようにしてあるので,そちらも参考にしてほしい。
     ここではGB-BXi5-4570Rが安定的に10%以上のスコア差を付けてA10-7850Kシステムを上回った。スコア7000以上に与えられる最高指標「非常に快適」を1280×720ドットでクリアしてきた,という点ではどちらも変わらないが,平均フレームレートでは76.6fps対66.3fpsと,けっこうな違いがある。また,1600×900ドットでGB-BXi5-4570Rが平均54.9fpsを叩き出している点も要注目といえそうだ。

    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた

     これが最高品質になると,様相が異なる結果となった(グラフ9)。1280×720ドットでさえスコアが4000台前半に留まる点は注意が必要であるものの,ここでは解像度が上がれば上がるほどA10-7850Kシステムが優勢となっていく。
     こういう違いが出ている理由は何だろうか。A10-7850KのメモリバスはCore i5-4570Rと比べて1.5倍の帯域幅を持つため,“重い”テクスチャほどA10-7850Kが有利になるということはありそうである。同時に,新生FFXIVでは標準品質より最高品質のほうがポストエフェクトが増えているため,演算ユニットの規模が大きいA10-7850Kのスコアが上昇しやすいということはあるかもしれない。

    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた

     最後はDirectX 11のフィーチャーをフルに使う「GRID 2」である。その結果がグラフ10で,ここではすべてのテスト条件でGB-BXi5-4570RがA10-7850Kシステムを下回ることになった。最も大きなスコア差がついた1920×1080ドットではA10-7850Kシステムの約89%だ。全体として気の利いたスコアは出ていないため,実際にゲームをプレイするならグラフィックス設定を下げる必要があるだろうが,ともあれ,DirectX 11タイトルではA10-7850Kが優勢という傾向に沿った結果が出ているとはいえるだろう。


     以上,総じてGB-BXi5-4570Rは健闘している印象だ。とくにDirectX 10以前のAPIを用いたタイトルや,描画負荷の低い曲面では,CPUコア性能の高さを武器に,A10-7850Kと十分戦えていると見ていいのではなかろうか。


    消費電力はかなり低め

    3Dゲーム実行時の動作音は……


     という具合に,ゲームテスト結果はなかなかのものを見せたGB-BXi5-4570Rだが,消費電力はどうだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を取得してみよう。
     テストにあたっては,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OS起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時とした。その結果がグラフ11である。

     A10-7850Kシステムとは電源周りがあまりにも異なるため,横並びの比較は行えない。そのためA10-7850Kシステムのスコアは参考としたが,GB-BXi5-4570Rは3Dアプリケーション実行時でも90W未満と,かなり低いのが分かる。電球1個分の消費電力で,3Dゲームがそこそこ動いてしまうわけだ。アイドル時にいたってはわずか18Wであり,これは相当に低消費電力と言い切ってしまっていいだろう。


     一方,動作音だが,これは結論から言うと,相応にある。前段で触れたとおり,GB-BXi5-4570Rで採用されているのは小型のブロワーファンであり,そのためか,ファン回転数が上がると,やや高い音に寄った音が聞こえてくるようになる。エントリークラスのGPUに搭載された,見るからに低コストな薄型クーラーの音に近い感じだ。
     というわけで今回は代表例として,Crysis 3実行時の音を録音してみたので,聞いてもらえればと思う。下にリンクボタンで示したのは,GB-BXi5-4570Rの正面からちょうど0.5m離れたところにコルグ製のポータブルレコーダー「MR-2」を置き,その内蔵マイクで録音した音を,zipファイルに圧縮したものだ。筆者の事務所には暗騒音が多めなので,やや分かりにくいかもしれないが,50秒経過時にCrysis 3を終了させた結果として,その後,ファンの音が小さくなっていくため,相対的な音の大きさは分かるのではないかと考えている。

    Crysis 3実行時のGB-BXi5-4570R動作音(zipファイル)


     感覚としては,机上にちょこんと置いて使うと,3Dゲーム実行時にややうるさく感じられる程度,といったところ。耳から離したところで使うなら我慢できるレベルと考えてもいいだろう。
     ちなみにアイドル時は極めて静かと言ってよく,耳を近づけないとファンの音は聞こえないほど。ちょっとびっくりするくらいの静音性だった。


    超小型ゲーム機として面白い存在

    最大の課題はIntelのドライバサポートか


    製品ボックス。すでに日本語が入っている
    「Iris Pro Graphics 5200」搭載のGIGABYTE製超小型ベアボーンが持つ性能をKaveriベースのPCと比較してみた
     以上,GB-BXi5-4570Rを試してきたが,軽量級のゲームタイトルであれば十分にプレイできるだけの3D性能を持っているとまとめてよさそうだ。新生FFXIVクラスだと,グラフィックス設定や解像度を相応に引き下げる必要があるものの,ほとんどの3Dオンラインゲームは,面倒な設定を行わずとも快適にプレイできると断言できるレベルにある。
     DisplayPortとHDMIを持ち,小型で場所を取らず,無線LANに対応するといったメリットもあるので,テレビとつないでゲーム機的に使ったり,メインPCのある部屋とは別の部屋でサブのゲームマシンとして使ったりするのにも向いている印象だ。

     懸念があるとすれば,やはりIntelのグラフィックスドライバだろうか。AMDがドライバスイート「Catalyst」の最適化を着々と進め,少なくともβドライバは1か月かそれより短い単位で更新しているのに対し,今回テストに用いたIntelのグラフィックスドライバ「15.33.8.64.3345」は,もちろんテスト開始時の最新版だが,それでも2013年11月27日付けのものだ。GPUコアの素性がどんなによくても,最終的なゲームにおける性能や安定性を決めるのはドライバの最適化度合いであり,そのときそのときの最新ゲームタイトルをプレイする前提に立つと,どうしてもIntelの統合型グラフィックス機能には不安が残る。

     ただ,懸念はそれくらいともいえ,使い方次第ではゲーム用途としても十分にアリだ。なんと言ってもこの小ささは魅力であり,小型PCを探しているなら,国内発売に関する情報が出てくるのをチェックすべき製品ではなかろうか。
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    ジャンル : ゲーム

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