Mantle版Battlefield 4を試す。APU+GPU構成時に衝撃的な性能向上を確認
AMDの主張によれば,Mantleによって,BF4はDirectX 11モードと比べて最大45%の性能向上が得られるとのことだが,実際のところはどうなのか。取り急ぎ検証してみた結果をお届けしたい。
対応GPUと対応アプリが揃って利用できるMantle
今回はAPU,APU+GPU,CPU+GPU環境でテスト
「Mantleとは何か」という話は,2013年11月に開催されたイベント「AMD Developer Summit 2013」のレポート記事に詳しいので,そちらも合わせてチェックしてもらいたいと思うが,まず,基本的なことを確認しておくと,Mantleの利用には,Mantle APIに対応したゲームアプリケーションとドライバソフトウェア,そして対応GPUが必要だ。
理論上はGCNアーキテクチャ対応GPUなら,すべてMantleに対応するはずだが,Catalyst 14.1 Betaが対応し,なおかつEA DICEが対応GPUに挙げているのは,写真のR9 290Xなどごく少数に留まる
Mantle 理論上は,「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャに対応したGPUなら,すべてがMantleに対応する。ただし,Catalyst 14.1 Betaで集中的に対応が行われているのは「Radeon R9 290X」「Radeon R9 290」「Radeon R9 280X」「Radeon R9 270X」「Radeon R7 260X」「Radeon R7 260」と,Kaveri世代のAPUである「A10-7850K」「A10-7700K」のみ。また,Electronic Arts(以下,EA)の子会社で,BF4の開発を手がけたEA DICEは,現時点での対応GPUをRadeon R9 290X(以下,R9 290X)とRadeon R9 290,Radeon R7 260XおよびKaveri世代のAPUのみとしている。
今後,対応製品が増えることは予告されているが,現時点でβ版Mantleの恩恵を最大限受けられるGPUやAPUはかなり限られる,というか5製品に留まるので,この点は押さえておいてほしい。
対応GPUが搭載された環境に1月30日付けのBF4アップデートを適用し,Catalyst 14.1 Betaも導入すると,「オプション」の「ビデオ」に「Direct3D 11」「MANTLE」の二択が追加される
Mantle
といったところを踏まえ,さっそくテスト環境の話に入ろう。
R9 290Xを組み合わせたA10-7850K。Mantleの導入でどれくらいの性能の違いを見せるだろうか
Mantle 今回は,「APU単体」,「APUと単体GPU版Radeonを組み合わせた状態」,そして「他社のCPUと単体GPU版Radeonを組み合わせた状態」の3パターンでテストを行うこととし,A10-7850KとR9 290X,それに他社製CPU代表として「Core i7-4770K」(以下,i7-4770K)を用意した。
A10-7850K単体では,Mantleの導入によって性能がどれくらい変化するかを見る。A10-7850K+R9 290Xでは,A10-7850Kを“CPU”として用い,CPUボトルネックがどう変化するか,i7-4770K+R9 290XではCPUボトルネックが限りなく少ない状況下でR9 290Xの性能にどういった違いが出るかをチェックすることになる。
Catalyst 14.1 Betaのシステム情報
Mantle テスト環境は表のとおり。BF4のテストは基本的に,4Gamerのベンチマークレギュレーション15.0準拠で実施するが,ただし,Mantleでは当然のことながら,DirectXベースのフレームレート測定ツール「Fraps」が使えない。そこで,フレームレートの取得は,BF4側に用意された機能を用いることにした。
具体的には,(日本語キーボードの場合)BF4のゲーム画面で[半角/全角]キーを押してコンソールを開き,そこで,「PerfOverlay.FrameFileLogEnable 1」と入力する。これにより,フレームタイムがログファイルに記録されるようになるので,レギュレーション準拠のプレイ操作を行い,1分強経過した時点で今度は「PerfOverlay.FrameFileLogEnable 0」を入力し,ログファイルへの記録を終了する。
このログファイルには,1フレームあたりに要する時間が記録されているため,そこから1分間分のデータを抽出すれば,平均フレームレートを算出できるというわけだ。そして,それを使えば,DirectX 11モードとMantleモードの比較が行えるという寸法である。
なお,A10-7850KとR9 290XではGPUコアのスペックがまったく異なることから,前者では「エントリー設定」を実行することとし,テスト解像度も1280×720ドット&1600×900ドットと低めにする。R9 290Xを用いるテストでは,レギュレーション15.0に準拠する形で「標準設定」「高負荷設定」を用い,解像度も1920×1080ドットと2560×1600ドットの2パターンとした。
Mantleが最大の効果を発揮するのはAPU+GPU時
スコアは衝撃の85%向上
テスト結果を見ていくとしよう。グラフ1はA10-7850Kにおけるテストだが,Mantleにおけるスコア向上率は3~5%程度。確かにDirectX 11モードと比べて向上しているが,劇的な違いにはなっていない。
それに対して,A10-7850KとR9 290Xを組み合わせたときの結果は,端的に述べて「衝撃的」と述べていいレベルにある(グラフ2,3)。DirectX 11モードの場合,標準設定の2条件と高負荷設定の1920×1080ドットで,A10-7850KのCPUコア性能がボトルネックとなり,スコアが63~64fps程度で頭打ちしてしまっている。それに対してMantleモードでは,A10-7850Kのボトルネックが消え,標準設定の1920×1080ドットでは120fps弱にまで平均フレームレートが向上しているのだ。実に約85%ものスコア向上であり,このインパクトは相当に大きい。
ただ,AMDのアピールに比べて,スコアが上がりすぎな気もする。Mantleでは,「APUとGPUを組み合わせたときに,APU型のGPUコアをポストエフェクト専用で使う」といった実装が可能だということなので(関連記事),ここでのスコアは,「MantleでCPUのボトルネックが解消した」だけではなく,APU側のGPUコアに,一部の処理をオフロードする最適化も適用されている可能性はあるかもしれない。
最後にグラフ4,5は,i7-4770KとR9 290Xを組み合わせた状態のスコアを見たものとなる。ここでのテスト結果はA10-7850Kを用いたときと似ており,MantleモードではDirectX 11モードに対して3~8%程度のスコア向上を実現している。
KaveriのCPUコア性能を補う可能性を秘めたMantle
対応タイトルと対応GPUの拡充は要注目
2014年1月6日に開かれたAMDのプレスカンファレンスで披露された,Mantle対応を謳うゲームやゲームエンジンの例。20以上の対応ゲームが開発されているとAMDは主張した
Mantle 以上,考察はさておいて,とにかく「数字」をお伝えしてみた。グラフィックスAPIという言葉の響きから,GPUポテンシャルの解放的なイメージをしていた読者は多いのではないかと思うが,BF4においては,単体グラフィックスカードを差して,CPU的に使ったKaveriへの恩恵が一番大きいという結果になった。筆者はA10-7850Kのレビュー後編で,ミドルクラス以上の単体グラフィックスカードを組み合わせようとすると,A10-7850KのCPUコア性能では厳しいと述べたが,対応タイトルにおいては,Mantleがその決定的な打開策となりそうである。
前述のとおり,対応GPUも対応タイトルも片手で数えられるほどのMantleだが,競合に対して高い性能を持つとはいえないCPUコア周りの弱点をカバーしてくれるということで,勇気づけられたAMDファンも多いのではなかろうか。今後のCatalystドライバアップデートや,EAをはじめとするソフトウェアメーカーのMantle対応アップデート状況からは,目を離さないことをオススメしたい。
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