ROCKSTAR HISTORIA Vol.9『Thrasher Presents: Skate and Destroy』
Text by Mask de UH
これまで様々な角度からROCKSTAR GAMESの過去タイトルを振り返り、その礎について考察してきたが、そろそろビデオゲーム史上の転換期となる『グランド・セフト・オートIII』の登場が近い。しかし、これまでも述べてきた通り、『GTAIII』に辿り着くまでの過程無くして『GTAIII』無し。1と2があるから3がある。そして、それ以外にも注目すべきタイトルは、まだまだある……という観点から、1990年代後期から2000年初期にかけての、ちょっとレトロなR★タイトルを紹介したい。
まずは、初代プレイステーション時代にリリースされた『GTA』シリーズ以外のR★タイトルに関してだ。『GTA』ばかりが注目されている感があるPS1時代だが、なかなかどうして野心的なタイトルも数多くリリースしている。中でも筆者のお気に入りは、北米のスケートボード・ムーブメントを牽引し、“スラッシャー”というアグレッシブなスポーツジャンルを生み出すまでに至ったスケボー専門誌「Thrasher Skateboard Magazine」とのコラボレートが実現した、奇跡的かつ異常に不良性感度が高い3Dスケボーアクションゲーム『Thrasher Presents: Skate and Destroy』('99年/以下、『スラッシャー』)だ!! が、まず本題に入る前に、ゲームの元ネタでもある「Thrasher Skateboard Magazine」の存在を、よもや知らない読者諸兄はいないと思うが、念のためここで基本情報に触れておこう。
1981年に創刊された「Thrasher Skateboard Magazine」は、70年代末にカルフォルニアに出現した革新的スケート集団ゼファーによる新たなトリック、技、そしてアテテュードに刺激された新時代のスケボームーブメントを象徴する雑誌である。同誌が従来のスポーツ雑誌と一線を画す点は、スケートボードやスター選手の記事だけでなく、スケボーを取り巻く様々な周辺文化やファッション、過激な主張やデザインによる風刺などを盛り込み、「良識ある親に嫌われるスポーツ」として認知させたことに尽きるだろう。スラッシャーのロゴは反抗の証となり、単なる専門誌を超えたブランドとしての存在感は圧倒的。また、1990年より毎年開催される同誌主催のスケーター・オブ・ザ・イヤーも、街の不良がスターに生まれ変わる登竜門として熱い注目を集めている(最初の受賞者はトニー・ホーク!)。また、メタリカのTシャツデザインなどで注目を集めたイラストレーターのPUSHEADも、同誌での活動からスターダムに駆け上がったのは間違いない。
(編集部より: Thrasher Magは気前よく過去のビデオアーカイブを公開中。まずはマスク・ド・UH氏オススメのライダー、クリスチャン・ホソイ! Class-sick!!!)
同誌が自分のようなボンクラにとって如何に重要な位置にある雑誌か理解していただけたところで、本題のゲームである。本作リリース当時は、決して数は多くはなかったものの、既にスケボーのゲームは多数リリースされており、その歴史自体も古い(詳細は、小社刊「洋ゲー通信AIRPORT 51」を参照していただけると大変喜ばしい。もちろん本作も取り上げてます!)。しかしながら、ビデオゲームのテクノロジー自体が進化の過程にあった時代であり、だからこそ個々のタイトルにユニークなエクスキューズが散りばめられていたのも事実。『スラッシャー』もまた、そんな革新的なポイントが随所に見受けられる傑作タイトルであると、ジェイ・アダムズばりの不良中年全開な笑顔で断言したい。
プレイヤーは6人の架空のスラッシャーを選択し、実際にストリートに出てトリックを決めまくるのだが、同誌による監修はゲームアクションの細部まで極めており、ストリートで実際に披露される危険なテクニックを、コンボのように再現なくキメまくる"オープンエンド・トリックシステム"が特に秀逸。ステージは決められたコースを滑走するのではなく、狭いながらもオープンワールドが実現しており、実在のスケボーパークや街並みを再現したステージも用意(ロサンゼルスのヴェニス・ビーチや、NYブルックリン橋の下など、スラッシャーを名乗る者なら興奮必至の場所多数)。
ゲームを開始すると、そこら中のポイント(路肩、ガードレール、ベンチ)を利用してスラッシュしまくり、通報されてポリが来るまでにポイントを稼げという違法性認識バリバリのゲーム性。逮捕されるまでスケボーに熱中するだけのゲームデザインになっているのが素晴らしく、またGTAシリーズにも通じるチェイスの要素が、ここにも明確に盛り込まれているのは興味深い。 同誌の監修はアクションに留まらず、トリックに失敗した時のダメージ表現まで実にリアルに再現している。難易度の高い技に挑戦して失敗し、派手に転んでアタマや腰を押さえて悶絶する様は、トリックに成功した時よりも何故か楽しかったりして、もっと危険なトリックをキメたくなってしまうのは実に危険。何か麻薬的な魅力すらある。これも本作独特の魅力といえる。
開発を担当したのはZ-AXIS。のちに伝説の"おっぴろげトリック"で、晴れて洋ゲー界のカルトゲームコーナーに仲間入りを果たした『BMX XXX』のデベロッパーといえば、因果な洋ゲー者ならピンと来るはず。なるほど、わかってらっしゃるR★! といった感じだ。
サウンドトラックのメンツも奮っており、アフリカ・バンバータやパブリック・エネミー、RUN DMCにグランドマスター・フラッシュなどなど、当時のゲームサントラとして考えると異様なまでに濃ゆ~いメンツが勢揃いしているあたりは、さすがR★。私見ではあるが、'99年当時を鑑みても、ブラックミュージック/HIP-HOPにおける、これほどの大物たちを一挙に集めたゲームソフトを筆者は他に知らない(他にあったら是非教えてほしい)。これだけでも十分凄いのだということを、重ねて強調しておきたい。
翌2000年には『スラッシャー SK8』の邦題でウェップシステムより日本版もリリースされている。日本で中古を探せば入手できるという意味では、日本版が殆どリリースされることが無かった当時のR★タイトルの中では異色の存在といえるだろう。未プレイの方にも敷居が低いのでオススメである。
ちなみに、本作から7年が経過した2006年にリリースされた学園アクション『BULLY』において、R★タイトルの中ではひさびさにスケボーが復活。トリックを決めたり、町中で暴れまくって通報されて警官から逃亡したり、逃亡するために通りすがりのクルマのボンネットに掴まって並走スピードアップを図ったり、そのままカーブで曲がりきれずにコケたら異様に痛そうなリアクションを見せるなど、『スラッシャー』の残り香を感じずにはいられないアクションに、筆者は1人で感動していた。『BULLY』以外のタイトルに今のところスケボーは公式には登場していないので、『スラッシャー』と『BULLY』はR★の二大スケボーゲームということになる(ついでに『BULLY』は販促グッズで実際のスケートボードを作っていた。詳細は本連載で『BULLY』を取り上げた時に譲りたい)。
そして、どちらのタイトルも反抗期を迎えたクソガキを讃えるという方向性は共通しており、相変わらず筋が通っているR★のポリシーには唸らされるばかりなのだった。
(編集部より: ついでにThrasher Magのアーカイブからjackassで有名なバム・マージェラの1998年のリール(jackaas以前!!)と、今やアーティストとしても有名なマーク・ゴンザレスの1991年のリールをドロップ。Classixx!!)
Rockstar Games 情報局 ROCKSTAR HISTORIA Vol.9『Thrasher Presents: Skate and Destroy』|ファミ通.com
http://www.famitsu.com/blog/rockstargames/2012/06/rockstar_historia_vol9thrasher.html
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