Logicool G「G303」レビュー。これは「G502」の小型軽量&メインボタン強化版マウスだ
G302の筐体にG502の光学センサーを搭載した軽量級ハイスペックマウスを試す
G303 Daedalus Apex Performance Edition Gaming Mouse
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小型軽量の右手用ワイヤードマウスである「G302 Daedalus Prime MOBA Gaming Mouse」(以下,G302)に,2015年4月時点におけるGxx2世代のフラグシップモデルとなる「G502 Proteus Core Tunable Gaming Mouse」(以下,G502)と同じ光学センサーを搭載し,小さなハイスペックモデルを狙った製品だが,今回は,その実力をじっくり見ていこうと思う。
なお,形状や持ちやすさ,設定用ソフトウェアの話は,いずれもファーストインプレッション記事でお伝え済みなので,本稿では繰り返さない。以上のポイントが気になった人は,掲載済みのファーストインプレッションを先に読んでもらえれば幸いだ。
Logicool Gの新型マウス「G303」ファーストインプレッション。4月23日に国内発売の「軽量級ハイスペック機」に触れてみた
センサー性能は非常に高い
キャリブレーションの効果も抜群
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●テスト環境
- CPU:Core-i7 4770(定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB)
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
※マウスはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
- グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-760OC-2GD(GeForce GTX 760,グラフィックスメモリ容量2GB)
- ストレージ:SSD(CFD販売「CSSD-S6T128NHG5Q」,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:95.1.24
- 「Logicoolゲームソフトウェア」バージョン:8.58.183
- DPI設定:200~12000 DPI(主にデフォルト設定の800 DPIを利用)
- レポートレート設定:125/250/500/1000Hz(※主にデフォルト設定の1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
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その結果は表のとおり。リフトオフディスタンスは最短0.6mm,最長でも1.4mmと,極めて優秀な結果だ。G502のレビューで,同製品におけるサーフェスキャリブレーション機能が素晴らしいという話をしたことがあるが,同じセンサーを搭載するG303でも,その恩恵に与れるわけである。
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下に示したグラフは,Y軸のプラス方向が左への移動。対するマイナス方向が右への移動時におけるカウント数,横軸がms(ミリ秒)をそれぞれ示している。青い点が実際のカウントで,青い波線は点を正規化したものとなる。ざっくりいえば,波線が青いラインの上にあればあるほどセンサー性能が良好ということだ。以下,テスト結果を並べてみよう。
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G302のテスト結果とは,明らかに異なる,優秀なスコアが得られたといえるだろう。センサーの挙動に不安や不満を持つことは,まずないのではなかろうか。
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直線補正有効時の結果。若干の補正がかかっている。決して強くはないものの,ゲームをプレイしていると,ときおり「アレ?」と,わずかな違和感があった | |
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直線補正無効時の結果。直線的なものであっても補正を感じることはなく,入力どおりのラインが引けた |
G302と似て,少し異なる内部構成
センサーはカバー付き
最後に,G303の内部をチェックすべく,分解していこう。
では最後にG303の内部を暴くべく分解をしていこうと思う。底面部に貼られている上下方向のソールを2枚はがすと4つのネジが露出する。このネジを取り払うと,上面部のパーツが取り外すことができ,内部を拝むことができる。
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![]() 光学式センサー(のカバー)とマイクロコントローラに寄ったところ。カバーを貫通するように,本体両サイド用のLEDユニットが基板にハンダ付けされているため,取り外せなかった | ![]() 代わりと言ってはなんだが,マイクロコントローラに貼られているシールを剥がしてみた。G302に搭載されているのと同じ,STMmicroeclectronicsの「STM32L100R8」だ |
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光学センサーはメイン基板にハンダ付けされているため,実際にその型番を確認することはできなかったが,ここまで確認してきた挙動からして,Logitech/ロジクールが言うとおり,G502と同じく,PixArt Imaging製の「PMW3366DM」が搭載されているはずだ。
なお,ファーストインプレッション記事で,G303,G302と比べて公称本体重量が5g増えていることを指摘したが,ケーブル込みの実測重量でG303が約132g,G302が約127gなのに対し,ケーブルを物理的に取り外した状態だと順に約81.5g,約86g。G303のほうが軽いのだ(※ケーブルの重量はG303が実測約50.5g,G302が同41g)。4.5g程度の違いを体感できるかどうかはともかく,公称重量だけを見て「重くなった」と判断するのは誤りということになるので,この点は押さえておきたい。
高いが,「G502のプレミアム版」としてはアリ
その総合性能は文句なし
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「G302のバリエーションモデル」と見ると,7200~8000円(税込)という実勢価格は明らかに高価だが,「G502の小型軽量化&メインボタン強化済みプレミアム版」として見れば,まずまず手を出しやすい価格帯にあるといえる。小ささと操作のしやすさ,そして性能にも優れるマウスを探している人には,ぜひともお勧めしたい製品だ。
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Logicool GのG303製品情報ページ
「Cherry MX RGB」は競合製品と光り方が違う! 約1680万色に光るCorsair製ゲーマー向けキーボードが10月下旬に国内発売
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税込の販売代理店想定売価は順に,3万2180円前後,2万8800円前後,2万3200円前後となっている。
ここでは発表会で披露された3製品の概要と,今後登場予定のゲーマー向けマウスおよびゲーマー向けヘッドセットの話題をレポートしよう。なお,2014年6月に開かれたCOMPUTEX TAIPEI 2014にて,CorsairおよびZF Electronicsの担当者にインタビューしたときの記事も掲載しているので,こちらも合わせて読んでいただきたい。
[COMPUTEX]七色に光るCherry MXキースイッチ搭載キーボードは,なぜCorsairから登場するのか。CherryとCorsairの担当者に聞く
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Corsairのキースイッチはキートップだけでなく,キーの周囲まで光る
まず3製品の違いについて簡単に説明しておこう。基本となるのは,テンキー付きキーボードのK70 RGBで,これのメインキー左側にマクロ用の[G]キーを18個追加したのが最上位モデルのK95 RGB。逆に,K70 RGBからテンキー部分と音量調節用ダイヤルを省いたものがK65 RGBという商品構成となっている。
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![]() K95 RGB。左端に18個の[G]キーを備えるハイエンドモデルだ | ![]() K65 RGB。テンキーと音量調節用ダイヤルを省いたコンパクトモデル |
国内発売される製品はいずれも,キースイッチ本体にCherry MX Red,いわゆる“Cherry赤軸”を使ったモデルとなっている。海外ではCherry MX Blue(Cherry青軸)やCherry MX Brown(Cherry茶軸)を採用する製品もあるのだが,リンクス・インターナショナルによると,Cherry青軸モデルは時期未定ながら投入予定があるものの,Cherry茶軸モデルについては未定とのことだった。
[G]キーやテンキー,音量調節用ダイヤルの有無など以外の仕様は3製品とも同一で,Nキーロールオーバー対応と100%のアンチゴースト,1000Hzのレポートレートといったスペックは全機種共通のものだ。
Corsair製の設定ソフト「Advanced Corsair Utility Engine」(以下,CUE)を使用することで,すべてのキーのキー割り当てを変更したり,マクロ機能を割り当てたりすることも可能な点も共通している。要は,キーの数以外の仕様は共通と理解していい。
![]() K95 RGBが装備する18個の[G]キー。この写真では分かりにくいが,これらのキーもメインキーと同じように光る | ![]() K70 RGBとK95 RGBの右上には,音量調節用ダイヤルやメディアコントロールキー,[Windows]キーのロックボタンやバックライト消灯ボタンがある |
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Handley氏は,従来のLEDバックライト付きCherry MXとCherry MX RGBの透視図を披露しながら,その違いを説明する。
従来型のキースイッチでは,スイッチ軸の隣にLEDが配置されており,それが点灯すると,キーの下側や半透明になったキートップの文字から光が漏れて見えるという仕組みだ。一方のCherry MX RGBでは,キースイッチが載る基板上に小型のカラーLEDが実装されている。そして軸の横に「LED Lens」なる小さなレンズを置いたことにより,光を上だけでなく側面にも広げる仕組みなのだという。この「クリアなレンズが一番の違い」であると,Handley氏はアピールしていた。
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スライドを撮影したので見にくいのは恐縮だが,Cherry MX RGB(左)と従来のCherry MX(右)の透視図。Cherry MX RGBのLEDは基板(PCB)上に表面実装されており,その上に配置されたレンズで光を周囲に拡散する仕組みだ |
さらに,半透明のカバーで覆われたキースイッチの根元部分が剥き出しになった特異なデザインを採用しているため,キーの側面も明るく光るようになっている。キーボードのデザイン自体も,Cherry MX RGBの仕組みを生かせるように設計されているわけだ。
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発光色カスタマイズは非常に柔軟
ただし自作するのはかなりの難易度
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設定可能な発光パターンは実に多彩で,波のように光が流れていったり,発光色が変わり続けたり,押したキーから光が広がるように光ったりと,およそ考えつきそうな光らせ方はなんでもできるといってよさそうだ。光が流れるように動くパターンの場合,動く方向を1度単位の角度で設定できるのにはちょっと驚かされた。
光るタイミングも設定できるので,たとえば「キーを押してから10秒後に光る」といった設定も可能だ。RPGなどで魔法やポーションを使うキーにこうした設定を割り当てておけば,クールダウン時間終了を光で示すといった使い方ができるだろう。
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幸いなことに,CUEには標準で多くの発光パターンを定義したプリセットが用意されているうえ,作成した発光パターンのプロファイルをファイルとして書き出したり取り込んだりする機能も備えている。Corsairのフォーラムページ(英語)には,他のユーザーが作成したプロファイルが多数投稿されているので,自分の使いたいプロファイルがあればそれを利用してもいいし,それらをカスタマイズして自分なりの発光パターンを作るのもいいだろう。
ちなみに,発光パターンのカスタマイズを極めると,下に掲載した動画のようなアニメーションをキーボード上で実現することさえできるそうだ。
K70 RGBのイルミネーション機能によるアニメーションの例

Handley氏によると,Corsairでは現在,ゲームデベロッパと協力して,ゲーム側からイルミネーション機能を制御するAPIを策定しているとのこと。これができれば,たとえばゲーム中にキャラクターの体力が減ったり,出血のような持続的ダメージを受けたりすると,キーの色や点滅でそれを表現するといったことも可能になるそうだ。今後の展開に期待したい。
イルミネーション機能搭載のレーザーマウスM65 RGBも発売予定
Handley氏はキーボードのほかにも,国内発売予定の製品についても簡単に説明してくれた。
1つめは,カスタマイズ可能なイルミネーション機能を備えるレーザーセンサー搭載マウス「M65 RGB」だ。海外ではすでに発表済みだが,まだ製品情報ページは用意されておらず,国内での発売時期も未定である。
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ボタン配置も若干だが変更されているそうだ。M65では左側面に,押している間だけDPIを下げる[スナイパー]ボタンが配置されていたのだが,この配置が押しにくく,ボタンも固いという問題がユーザーから指摘されていたそうだ。そこでM65 RGBでは,[スナイパー]ボタンを少し手前側に移動させて,ボタンも押しやすいものに変更されている。M65を試用して「なんだかサイドのボタンが押しにくいな……」と思った人は,M65 RGBに期待してみよう。
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国内での発売時期はやはり未定であるが,ワイヤレスヘッドセットに興味のある人は今後の情報に注目しておくとよさそうだ。
Corsair ゲーマー向けキーボード製品情報(英語)
HORI,格闘ゲーム用の左右非対称ゲームパッド「ファイティングコマンダー」のPS4&PS3両対応版
ファイティングコマンダー4は,左右非対称デザインと,D-Padの角度および入力範囲調整機構,前面6ボタンが特徴のPlayStation 3用ゲームパッド「ファイティングコマンダー3 PRO.」を,PlayStation 4にも対応させてきた製品という位置づけだ。PlayStation 4対応ということで,一部ボタンの呼称が変わっているものの,基本仕様に違いはない。
メーカー想定売価は4860円(税込)で,PlayStation公式ライセンス取得予定。ゲームパッド派の格闘ゲーマーは,発売日を覚えておくといいのではなかろうか。
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ホリ 公式Webサイト
製品名 | ファイティングコマンダー4 |
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概要 | PlayStation 4/PlayStation 3 両対応 表6ボタン式 格闘ゲーム特化コントローラ |
発売日 | 2014年6月12日発売予定 |
品番,JAN | PS4-016,4961818022300 |
価格 | ¥4,500(税抜),¥4,860(税込) |
格闘ゲームに適したパッド型デジタルコントローラがPS4モデルでも登場!!
【製品の特長】
●PS4、PS3両対応の表6ボタン式 パッド型コントローラ。
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“スパイラル方向キー”
- 方向キー角度調節機能:右20度まで任意に角度調節できる機能。自分に合ったポジションでプレイ可能。
- 方向キー入力範囲調節機能:斜め入力範囲を選べる3段階から任意に調節できる機能。
コマンド入力中心の格闘ゲームや縦横方向の入力中心のパズルゲームなどゲーム性に合わせて操作性を向上させることができます。
“LRボタン切替機能”
上面のL1/L2ボタンとR1/R2ボタンをスイッチ1つで切替可能。
- 通常モード:L1/L2とR1/R2が上面にそのまま配置。(R1/R2が2つ認識します)
表6ボタンを親指以外で操作される方に最適です。 - 切替モード:R1/R2の位置にL1/L2が移動、L1/L2の位置にL3/R3が配置されます。
右手で8ボタン、左手で方向キーとL3/R3を操作することが出来ます。
“左右非対称グリップ”
左側グリップは握りやすい形状で操作のブレをなくし、右側グリップは大きな6ボタンを押しやすい形状になっており、置いた状態ではスティックのような操作も可能です。
●方向キー切替機能
方向キー/左アナログスティック/右アナログスティックの機能をスイッチ1つで切替可能。
※アナログ入力には対応しておりません。
●連射機能/連射ホールド機能
割り当て可能ボタン・方向キー(上下左右)/○/×/△/□/L1/L2/R1/R2ボタン
※連射速度は 20連射/秒 固定となります。
※方向キーにはホールド機能の設定は出来ません。
【主な仕様】
- 全長×奥行×高さ:約155mm×約107mm×約66mm
- 質量:約260g(ケーブル含まず約170g)
- 接続方式:ケーブル接続(ケーブル長:約3m)
【ご注意・その他】
※PlayStationオフィシャルライセンスプログラム申請中
※現在開発中であり、商品仕様・デザインは変更される場合がございます。予めご了承ください。
- 本品は株式会社ソニー・コンピュータエンタテイメントの商標登録です。
- 本品はPlayStation 2、PlayStationおよびPS oneにはご使用になれません。
- 本品はPlayStation 2規格のソフトウェアでの動作保証は致しません。
- PlayStation 4、PlayStation 3のシステムソフトウェアバージョンによってはお使いいただけない場合があります。
- “PlayStation”および“PS one”は株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの登録商標です。
- 本品はモーションセンサーには対応しておりません。
【関連サイトURL】
■製品紹介ページ
http://www.hori.jp/products/ps4/ps4_ftc/
■株式会社ホリ
http://www.hori.jp/
テーマ : ■PLAYSTATION®3
ジャンル : ゲーム
SteelSeriesのiOS 7対応ワイヤレスゲームパッドはデキがよかった
SteelSeries Stratus Wireless Gaming Controller
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時は流れて2014年。現在では,スマートフォン(以下,スマホ)やタブレット端末用のゲームタイトルを,腰を据えて遊びたいというニーズが出てきている。「据え置きのものを持ち運びたい」が,今度は「持ち運べるものを据え置きたい」になったわけだ。世の中,何が起こるか分からない。
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製品ボックスはSteelSeriesらしい,黒とオレンジを基調としたもの。今回入手したのはブラックモデルだが,オンラインのApple Store限定でホワイトモデルも用意されている |
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こちらがFree。野心的な製品ではあったのだが,いかんせん対応するAndroid&iOS用ゲームタイトルが少なく,「PCとMacで使うにはやたら小さいワイヤレスゲームパッド」になってしまっていた |
ちなみにこのStratus,ベースとなっているのは,PCとMac,Android端末,iOS端末に対応するという触れ込みで2012年に発表された「SteelSeries Free Mobile Gaming Controller」(以下,Free)である。Free自体は野心的なデバイスだったのだが,欲張りすぎたというか,対応機器が多い割に実際に使えるゲームタイトルはほとんどないという,かなり残念な製品になっており,結局,日本市場では発売されなかった。
Stratusの外観は,Freeを踏襲したものになっているわけだが,ターゲットをiOSに絞ったことで何が変わったのか。そして,iOS向けタイトルをじっくりプレイしたい人の期待に応えてくれるのか。今回はその点をチェックしていきたい。
本題へ入る前に,「iOSデバイス用ゲームパッド事情」を少し
本題へ入る前に少しだけ,iOSデバイス向けゲームパッドとはどういうもので,いまどういう状況に置かれているかという話をさせてほしい。というのも,iOSデバイス用ゲームパッドは,その存在そのものが黎明期(それもかなり初期)にあるからだ。
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Appleが定義する標準型+組み込み型のリファレンスデザイン |
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こちらは拡張型+スタンドアロン型のリファレンスデザイン。当たり前だが全然違う |
さらに,iOSデバイスとの接続方法によっても分類がある。横画面状態のiOSデバイスとLightning端子経由で接続され,iOSデバイス側のタッチスクリーンや傾け操作も併用しながら使うことになるものは「組み込み型」,iOSデバイスと物理的には接続されず,ゲームパッドだけですべての操作をまかなうものは「スタンドアロン型」だ。
要するに,これらの組み合わせによってiOSデバイス用ゲームパッドは定義されるわけだが,操作に利用できる入力系の数が少なくなりすぎることから,「標準型+スタンドアロン型」というのは定義されていない。よって,iOSデバイス用ゲームパッドとして登場する可能性があるのは(少なくとも2014年5月時点のデザインガイドに従う限り)3パターンであり,Stratusは「拡張型+スタンドアロン型」,G550は「標準型+組み込み型」ということになる。
何が言いたいかというと,先に登場したG550と,今回のStratusでは,ゲームパッドとしての位置づけが大きく異なるのだ。G550はどちらかというと補助的なのに対し,Stratusは,ゲーム操作のすべてを賄おうとする,世間一般でイメージされる「ゲームパッド」の姿に近い製品といえるだろう。
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常識的に考えれば,「標準型」のゲームパッド(以下,標準型ゲームパッド)に対応しているゲームアプリは,「拡張型」のゲームパッド(以下,拡張型ゲームパッド)で問題なくプレイできるはずだが,今回は,そのあたりも念頭に置きつつ,以下の本文を読み進めてもらえれと思う。
気になるところがないわけではないが,
持ち運びを前提とした形状と入力系は合格点
冒頭で「Freeがベース」と紹介したが,Freeは国内発売されなかったので,完全な新製品としてStratusを概観してみよう。
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Stratusを正面から。フォルムはどことなくセガサターンパッドを彷彿とさせる |
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本体中央には4連のLEDインジケータがある。機能を説明しだすとキリがないので,本稿では必要なものだけ説明したい。詳細はマニュアルを読んでくださいということで |
ただ,そのサイズは非常に小さく,ボタン抜きの実測で110(W)
接続インタフェースはBluetooth 2.1で,バッテリーは内蔵のリチウムイオン電池となるが,その割に重量は実測62gと軽い。ちなみにバッテリーは,残量ゼロの状態から満充電まで2時間かかり,満充電から約10時間の連続稼働が可能だという。実際,数時間レベルの連続操作でバッテリーが切れることはなかった。
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ショルダーでは,3連の突起がある[L1][R1]ボタンが握ったときの手前側に,[L2][R2]トリガーが奥側に並ぶ。これはAppleの仕様どおりなのだが,[一時停止]ボタン以外はすべて感圧式となっており,ゲームアプリ側の実装次第では,押下圧によるアクションの微調整も可能だ。
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まずアナログスティックは,親指を載せる台の直径が実測約11mm。P
親指を当てる部分が凸状のため,親指の腹でしっかりホールドしてやる必要があるのだが,そのとき左右スティックの感覚が短いため,親指同士が触れてしまうのは減点対象となるだろう。ちなみにこの問題はFreeにもあったので,「とくに手当てされていない」ということにもなる。
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D-Padと同様,ストロークは1.5mmほどで,押下時の反発力に特徴はない。いい意味で平凡な押し心地といったところだろう。ボタンを離して,戻るときの音がやや大きめだが,問題になるほどではない。
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具体的には,ヒンジに相当する部分がショルダーの外側にあり,人の身体に喩えると,実際に押下するのは“肩”(ショルダー)というより,“首の根元”や“鎖骨”のあたり――つまりパッド上部中央付近――となる。こうすることで,パッドを深くホールドした状態でも,人差し指や中指の腹でショルダーボタンを押せるというわけだ。
ただし,カバー兼グリップをパッド背面に取り付けたときは,パッド正面から見て奥側になる[L2/R2]トリガーを押すとき,カバー兼グリップと指が干渉することがあった。ここは指摘しておきたい
![]() [L1/R1]ボタンは長く,[L2/R2]ボタンは短い。ヒンジの位置にも言えることだが,コンパクトな筐体に合計4個のショルダーボタンを搭載すべく,かなり苦心した様子が窺える | ![]() パッド背面にカバーを取り付けると,そのカバーに指が当たって[L2/R2]ボタンを押し損ねる恐れがある。[L1/R1]ボタンとカバーの間に[L2/R2]ボタンが挟まれる形となるためだ |
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本体背面の「ペアリングボタン」。驚くべきごとに,ペアリング自体には使わない |
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電源スイッチは本体右側面にある。オフのときはオレンジ色のマークが見える仕掛け |
というわけでやり方だが,まだペアリングされていない状態のStratusに電源を投入し,次にiOS側のBluetoothを有効化していれば,iOS側に「SteelSeries Stratus」というデバイス名が表示される。そこで,このデバイス名をタップすればペアリングは完了だ。ペアリングにあたって,Stratus本体背面のボタンを押す必要はない。
念のため確認しておくと,対応デバイスは,iOS 7が動作するiPhone 5s&5とiPad Air,iPad mini,第4世代iPad,第5世代iPod Touch。一度ペアリングしてしまえば,次回からは,Stratusの電源を入れるたびに,最後に接続したiOSデバイスと自動的に接続される。非常に簡単である。
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さて問題の(?)ペアリング関連ボタンことペアリングボタンだが,その機能についてマニュアルには,「パッド側に保存されている履歴を削除したい場合は5秒長押し」「履歴を消去せずにペアリングモードに切り替えたい場合は2秒押し」(※いずれも要約)といったことが書かれている。いずれも複数のiOSデバイスでStratusを使う場合に使用する機能なのだが,少し分かりにくいので,大雑把に以下のような場合に使用すると考えてほしい。
- パターンA:5秒押し
Stratusが,最後に接続したiOSデバイス以外とペアリングできない場合に使用する - パターンB:2秒押し
パターンAではない状態,かつ,すぐにStratusのペアリング先を現在のiOSデバイスからほかのiOSデバイスに切り替えたい場合に使用する
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この結論にたどり着くまでに2時間以上の検証時間を要したことは涙ながらに付記してきたい。
なお,StratusとiOSデバイスをペアリングして一定時間放置したところ,約15分(実測)で自動的にペアリングが解除され,StratusのLEDがすべて消灯した。「電源オンかつ電池の残量がゼロでない状態でLEDが完全に消灯する」という状態は,起動したゲームによって,またゲーム起動中にペアリングもしくは切断を行うことによっても発生するが,「一定時間でLEDが完全消灯」に限ってはサスペンド状態に移行したと考えていいだろう。この場合は,[一時停止]ボタンを押せば,Stratusから再びペアリング要求が送られるようだ。
ただし,このサスペンドによってペアリングが切れた場合の挙動も,やはりゲーム側の実装による。自動でゲームパッドの入力受付を再開するパターンもあれば,ペアリングが途切れた段階でバーチャルパッドモードなどへ移行したため,メニューから再びゲームパッドモード的な選択肢を選ばなければならないパターンなどがあった。
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いくつかゲームをプレイ
なるほどこれは“コンシューマ次元”だ
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今回用意したのは,筆者私物のiPhone 5とiPad Air。ともにiOSのバージョンは7.1.1となる。ただし,プレイした範囲ではiPhone 5とiPad Airで異なる挙動が見られなかった点,そしてiPadユーザーのほうが,ゲームパッドをより強く求めていたであろう点を考慮して,基本的にはiPad Airを前提に語っていきたい。
なお,この段落では,カバー兼グリップをStratusの本体背面に取り付けている。
■アナログスティックを使用するタイプのタイトル
アナログスティックをごりごり利用するタイプのタイトルとしては,FPS「DEAD TRIGGER 2」を取り上げて語っていこう。DEAD TRIGGER 2はStratus公式対応済みタイトルで,拡張型ゲームパッドをサポートしているため,左右のアナログスティックと[L2/R2]ボタンにもボタンがアサインされている。
StratusでDEAD TRIGGER 2をプレイ

DEAD TRIGGER 2における基本操作は,左アナログスティックで前後左右移動,右アナログスティックで方向転換およびAIMを行うという形だ。総じてタッチパネルにはない良好な操作フィールを得られたが,小さな右アナログスティックを使ってのAIMは,「アナログスティックを倒す角度あたりの照準移動量」が大きく,やや難しい。慣れないうちは――というか筆者はまだ慣れるビジョンが見えていないのだが――照準がぴょんぴょん跳ねることになるだろう。
DEAD TRIGGER 2ではたまたま,敵として登場するゾンビの背丈に幅がないので,「一定の高さでレティクルを固定して,左スティックによるキャラクターの移動でレティクルを左右にずらして敵を撃つ」ことが可能だった。一方で,クレー射撃のように複雑な動きのオブジェクトを精密AIMするとなると,かなりの練習が必要かもしれない。
なお,気になっていた「左右アナログスティック同時使用時に生じる親指同士の干渉」だが,筆者はそれほど気にならなかった。手の大きな人でも,持ち方を工夫することでしのげるレベルではないかと思われる。
とりあえず言っておきたいのは,「やっぱり指で画面が隠れないって素晴らしいな」ということだ。
■シビアな操作が要求されるゲーム
シビアな入力がされるゲームでの操作性は,2D格闘ゲーム「THE KING OF FIGHTERS-i 2012」で語ってみたい。本作は,Stratus,G550のいずれにおいても公式対応タイトルとして名を連ねているのだが,プレイしてみたところ,D-Pad,[A/B/X/Y]ボタン,[L2/R2]ボタンに加えて,左右のアナログスティックと[L2/R2]ボタンにもそれぞれ操作がアサインされていたので,拡張型ゲームパッド対応タイトルということになる。
さて,格闘ゲームというと気になるのは操作に対する反応の遅延だろうが,あるかないかといえば「ある」。
ただ,プレイには支障がないほどわずかなレベルなのも確か。このわずかな遅延と,物理的なD-Padや[A/B/X/Y]ボタン,ショルダーボタンを使えるメリットを天秤にかければ,後者のほうがはるかにメリットが大きいというのが筆者の印象だ。
StratusでTHE KING OF FIGHTERS-i 2012をプレイ

実際にプレイしてみて,ラグ以外で気になったのは2つ。
1つは,D-Padの押下を認識するポイントが深めなので,D-Padの上下左右を意識してしっかりと押し込んでやる必要がある点である。








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これらはいずれもソフトウェア的な閾値設定のようなものがゲーム側に用意されれば解決する気もするが,少なくとも現状では,ホールド方法の工夫など,ユーザー側の対処が必要になる。この点は指摘しておきたい。
もう1つ,シビアな操作が要求されるタイトルとして,Stratusで公式にサポートしているシューティングから「R-TYPE II」もプレイしてみたのだが,こちらは左アナログスティックを使っても,D-Padを使っても,自機の移動開始と停止がどこかぎこちない。
というわけで別途「Phoenix HD」を試してみたところ,こちらは入力に対して非常に反応よく動いた。反応速度はゲーム側の実装によって変わってくるという理解で,やはりよいようである。
StratusでPhoenix HDをプレイ

実は今回,Stratusで最初にプレイしたのがR-TYPE IIであり,ゲームを始めた直後に「これはもしやラグか? 終わったわ~」と早合点していた。対応ゲームタイトルだからといって,すべてで完璧な動作を期待できるわけではないので,その点は頭に入れておいたほうがいいだろう。
まあ,とにもかくにも,やっぱり指が画面で隠れ(以下略)。
■なんとなく気になるゲーム
最後に,5月8日に配信が始まったばかりの「モンスターハンターポータブル 2nd G for iOS」(以下,MHP2G for iOS)もプレイしておこう。
MHP2G for iOSは拡張型ゲームパッドに対応しており,「標準型」のアサインに加え,左右のアナログスティックと[L2/R2]ボタンにも操作がアサインされている。拡張型ゲームパッドが操作に使用するボタンの数はPS2パッドと同じなので,「これはもしや“モンハン持ち2が可能に!?」と期待したが,残念ながらカメラ操作はD-Padではなく右スティックに割り当てられており,設定変更不可だった。攻撃関係のボタンは[Y/B]ボタンに割り当てられているため,一言でまとめるなら,「右スティックでカメラを操作するPSP版」的な操作体系といったところだろうか。
……惜しい。非常に惜しい。ここはなんとかアップデートでの対応を強く要望したいところである。
Stratusでモンスターハンターポータブル 2nd G for iOSをプレイ

なお,MHP2G for iOSをプレイしたことで,[R1]ボタンの長押し(=スタミナを消費してのダッシュ)という操作を試すことになったが,ここでもボタンを押下するときの「認識点の深さ」が気になった。きちんと押し込まないと[R1]の入力が行われず,ダッシュが途切れることがあったのだ。些末ではあるが,事象としては報告しておきたいと思う。
最後に,iPadをめちゃくちゃ据え置き機っぽく使ってやる! ということで,iPad AirのビデオとサウンドをHDMI接続で私物のパナソニック製テレビ「スマートビエラ TH-L42E60」に出力して,MHP2G for iOSを遊んでみた。iPad Airとテレビの接続に使用したのは,Appleの「Lightning Digital AV Adapter」だ。
その結果が下のムービーで,まあ,予測できていた話ではあるのだが,iPad Airからテレビへの出力時に表示遅延が発生しており,反応がかなり緩慢になる。プレイできないとまでは言わないが,「ナルガクルガのビターンやラージャンのバックステップは避けられないっぽい」と,漠然とした印象を述べておこう。
Stratusでモンスターハンターポータブル 2nd G for iOSをプレイ(withテレビ)

シビアな入力が必要な局面はさすがに厳しいが
対応タイトルの多くで頼れる相棒になるStratus
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もちろん前述のとおり,シビアな入力を必要とするゲームを前にすると,わずかながら確かに存在する入力遅延や,D-Padとショルダーボタンの押下認識点の深さといった問題はあり,「何の問題もなく快適にプレイできる」と言い切れない部分はある。
ただ,これはあくまでもコンシューマゲーム機のゲームパッドなど,ある意味でこなれた製品と比較した話だ。こう言ってはミもフタもないが,Stratusの評価ポイントが,その反応速度や細かいボタンのフィーリングに集中するのは少し違うのではないかと筆者は考えている。
少なくとも,特定の入力が全然ダメとかいったことはない。モバイルデバイス用のゲームをプレイするためのゲームパッド第1弾として,合格点を与えられる完成度になっているところこそが,Stratusの魅力ではなかろうか。
2014年5月22日時点におけるオンライン版Apple Storeの直販価格は7800円(税別)。税込みでは単純計算で8424円となる。そのかわいらしい佇まいとは裏腹に,価格的なハードルは低くないわけだが,それでも,iOSデバイスで,腰を据えてゲームパッド対応タイトルをプレイしたいのであれば,購入して後悔することはないだろう。
オンライン版Apple StoreでStratusを購入する
SteelSeriesのStratus製品情報ページ
ZOWIEのIE3.0クローン「EC」,第3世代モデルは何が変わったのか
ZOWIE EC1 eVo CL,EC2 eVo CL
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ZOWIE GEARの立ち上がった当時,大規模なゲーム大会における主力ジャンルはFPSで,とくに「Counter-Strike 1.6」が花型競技だった。そこでZOWIE GEARは,同タイトルの元プロゲーマーであり,引退後もコミュニティに大きな影響力を誇っていたEmil“HeatoN”Christensen氏(以下,HeaToN)およびAbdisamad“SpawN”Mohamed氏を,製品開発のパートナーとして迎え入れ,プロゲーマーをターゲットにする製品の開発を開始した……という話は,どこかで聞いたことがあるという読者も少なくないだろう。
そして,ZOWIE GEARの第1弾マウスとして2010年に発売となったのが,HeatoNの本名からその名が付けられた「EC1」「EC2」だ。俗にいう,往年の名機「IntelliMouse Explorer 3.0」(以下,IE 3.0)クローンながら,サイズ違いで2モデル用意してきた――EC2のほうがEC1より小さい――のがトピックだった。
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製品開発パートナーが途中で変わったことにもなるが,果たしてそれによって何が変わり,何が変わっていないのか。前振りが長くなったが,今回はその点を明らかにしてみたい。
未公開部分が多く,公称スペックでの比較は難しいが
実機レベルでの違いは多くない
というわけで,さっそくだがそのスペックを公開情報で比較してみよう。下の表1はEC1 eVo CLとEC1 eVo,表2はEC2 eVo CLとEC2 eVo CLのスペックをまとめたものだ。サイズと重量は実測値で,それ以外はZOWIE GEAR公式のものを用いている。
EC1 eVo CL | EC1 eVo | |
---|---|---|
ボタン数 | 6(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,サイドボタン×2,DPI切り替え) | 6(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,サイドボタン×2,DPI切り替え) |
トラッキング速度 | 未公開 | 60IPS |
最大加速度 | 未公開 | 20G |
DPI | 450/1150/2300DPI | 450/1150/2300DPI |
フレームレート | 未公開 | 6400fps |
画像処理能力 | 未公開 | 未公開 |
レポートレート | 125/500/1000Hz | 125/500/1000Hz |
リフトオフディスタンス | 1.5~1.8mm | 1.5mm |
実測サイズ | 70(W)×128(D)×43(H)mm | 70(W)×128(D)×43(H)mm |
実測重量 | ケーブル込み138.5g,ケーブルを重量計からどかした参考値101~103g | ケーブル込み139.5g,ケーブルを重量計からどかした参考値97.5~98.5g |
EC2 eVo CL | EC2 eVo | |
---|---|---|
ボタン数 | 6(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,サイドボタン×2,DPI切り替え) | 6(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,サイドボタン×2,DPI切り替え) |
トラッキング速度 | 未公開 | 60IPS |
最大加速度 | 未公開 | 20G |
DPI | 450/1150/2300DPI | 450/1150/2300DPI |
フレームレート | 未公開 | 6400fps |
画像処理能力 | 未公開 | 未公開 |
レポートレート | 125/500/1000Hz | 125/500/1000Hz |
リフトオフディスタンス | 1.5~1.8mm | 1.5mm |
実測サイズ | 67(W)×122(D)×42(H)mm | 67(W)×122(D)×42(H)mm |
実測重量 | ケーブル込み133.5g,ケーブルを重量計からどかした参考値92.5~94.0g | ケーブル込み135.5g,ケーブルを重量計からどかした参考値94.0~95.5g |
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そんななかで気になるのは,実測重量に微妙な違いがあることだが,これは,EC eVo CLにおける細かな変更によるものだろう。今回,製品設計の都合上,分解してケーブルを取り外した状態の重量は計測できていないため,参考重量の大小にあまり意味はない。そのため,ケーブル込みの重量で比較してほしいと思うが,EC eVoでは全面ラバーコートだったのが,EC eVo CLでは黒い上面カバー部のみがそうなっているとか,底面のセンサー部でEC eVoではレンズユニットがほとんど剥き出しのような格好だったのに対し,EC eVo CLでは遮蔽板のような板が追加されたといった違いが生じているので,これが数g程度の違いを生んだ可能性が高い。
ただ,体感はできないはずだ。少なくとも筆者には,EC eVoと変わらない重さだと感じられた。
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形状,そしてサイズが従来製品と変わらないので,金型は同じと断言していいだろう。コーティングの変更で,本体側面の白い部分は光沢のないプラスチック的な肌触りになっており,側面もラバーコートされ,すべすべしていたEC eVoと比べると,EC eVo CLは指が軽く貼り付くような感覚で,持ちやすさは若干向上しているように思える。ただ,ここは好みの問題という気もするので,「Coollerが貼り付く感じを好んでいるからこうなった」ということなのかもしれない。
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なぜ8つもノッチを増やしたのか。QUAKE LIVEでCoollerが使っているconfigファイルを調べてみたところ,スクロールホイールには下記の2つが割り当てられていた。
- bind mwheeldown "say ^0gl master ^7*^4*^1*"
- bind mwheelup "+button2"
上段はメッセージバインドで,下段は任意のタイミングで使えるアイテムの利用ということらしい(※QUAKEのコンペティションルールだと,このアイテムは用意されないので,なぜこれがバインドされているのかは分からない)。
正直,これだけではノッチが増えた理由を断じることはできないが,「ノッチ数が多いほど,configで指定した動作の発動するタイミングが早くなるから」か,「感覚的になんとなく」が本当の理由なのではないかと筆者は考えている。
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「謎のセンサー」が分からないから分解!
内部を見る限り,基本的には従来製品と変わらずか
スペックだけだとセンサーの詳細が分からない。なら,実際に中を確認してしまえばいいじゃないかということで,今回は従来製品となるEC1 eVoおよびEC2 eVoともども分解してみよう。
※注意
マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
下に示したのは底面部のネジを外してカバー部を開けたところだ。本体のカラーリングが異なるためにけっこう違って見えるが,冷静に配線や基板を見ると,EC1 eVo CLとEC1 eVo,EC2 eVo CLとEC2 eVoは非常によく似ている。
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そして気になる光学センサーだが,いずれも「A3090」という刻印があるので,PixArt Imaging(旧Avago Technologies)の「ADNS-3090」採用で間違いない。つまり,前段の表1~2で「未公開」となっていたところは,EC1 eVoおよびEC2 eVoと同じスペックということだ。
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ボタンはいずれもHUANO製で,左右メインボタン用はZOWIE GEARロゴ入りのカスタムモデルというのも従来製品から変わらず。一方,スクロールホイールは,溝の数が同じながら,EC eVo CLシリーズで歯車のノッチが増えているのを確認できよう。
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というわけで,EC eVo CLとEC eVoでは,ほとんど何も変わっていない。変わっているのは本体底面の遮蔽板のみと述べてもいいくらいだ。もちろん,ファームウェアレベルでCoollerの意向に沿うアップデートが入っている可能性はあるのだが,ハードウェア的にはマイナーチェンジレベルといったところである。
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センサー周りの挙動は従来製品と変わらず
EC1とEC2の違いは予想以上に持ちやすさを左右する
センサーが変わらない以上,センサー周りの使い勝手は変わらないと推測されるが,念のため,複数のマウスパッドにおける相性テストも行っておきたい。検証にあたってのテスト環境とテスト時のマウス設定は以下のとおりだ。ZOWIE GEARは,マウスなどの設定ソフトウェア的なものを用意していないので,下に示したものが,テストにあたって設定した内容のすべてである。
●テスト環境
- CPU:Core-i7 4770(定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB)
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
※マウスはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
- グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-760OC-2GD(GeForce GTX 760,グラフィックスメモリ容量2GB)
- ストレージ:SSD(CFD販売「CSSD-S6T128NHG5Q」,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:未公開
- ドライババージョン:6.1.7600.16385(※MicrosoftのUSBドライバ)
- DPI設定:450/1150/2300DPI(※主に1150DPIを利用)
- レポートレート設定:125/500/1000Hz(主にデフォルトの1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度の高める」:無効
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- ARTISAN 隼XSOFT(布系)
- ARTISAN 疾風SOFT(布系)
- ARTISAN 飛燕MID(布系)
- Logicool G440(プラスチック系)
- Logicool G240(布系)
- Razer Destructor 2(プラスチック系)
- Razer Goliathus Control Edition(布系)
- Razer Goliathus Speed Edition(布系)
- Razer Manticor(金属系)
- Razer Sphex(プラスチック系)
- SteelSeries 9HD(プラスチック系)
- SteelSeries QcK(布系)
- ZOWIE G-TF Speed Version(布系)
- ZOWIE Swift(プラスチック系)
なお,EC1 eVo CLとEC2 eVo CLとで,センサーに起因する操作感の違いは当然ながらなし。マウスパッドとの個別相性について述べるなら,Razer Destructor 2とSteelSeries 9HDではやや滑り過ぎるきらいがあるのと,ZOWIE G-TF Speed Versionではマウスを大きく振ったときにわずかながらネガティブアクセル感があたが,気になったのはそれくらいだ。全体的にはクセのない操作性と評していいだろう。
直線補正は,Windows標準の「ペイント」を使って,実際に線を引いて確認してみた。ここでは従来製品ともどもテストしてみたのだが,下に結果を示したとおり,とくにこれといった違いは感じられない。補正は,筆者の体感的には「ない」と言えるレベルで,あったとしても極めてわずかだと思われる。
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最後に,握った感覚についても写真とキャプションで述べておこう。今回も,「かぶせ持ち」「つまみ持ち」と「つかみ持ち」,そして筆者独自の持ち方だと信じて疑わない「BRZRK持ち」で検証してみたので,以下,参考にしてほしい。
なお,EC1 eVo CLとEX2 eVo CLでは,握ってしまうと写真レベルでは違いが分からなくなることから,ここではEC1 eVo CLを代表して掲載し,テキストでEC2 eVo CLの話もカバーすることにしたので,この点はご了承を。
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以上,EC1 eVo CLとEC2 eVo CLのどちらが合うかは,一にも二にも手の大きさ次第という結果になった。個人的にはEC1 eVo CLのかぶせ持ちがベストで,指にほとんど負担をかけることなく自然に持てたが,手の小さい人だと,まったく違った印象になるのではなかろうか。ZOWIE GEARは,だからこそ微妙にサイズの異なるマウスを用意しているわけで,ここは店頭で手に取るなどして,「自分にはどちらが合うのか」をじっくり吟味してほしいところである。
Coollerバージョンはほとんどカラバリ!?
これといった進化は感じられない
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とはいえ,EC eVoシリーズ自体,IE3.0クローンとして完成度は高く,かつ,手の大きさや握り方に合わせてサイズを選べるという希有な特徴もあるので,“カラバリモデルに毛の生えた程度”だったとしても,それはEC1 eVo CLとEC2 eVo CLの価値を下げるものではない。すでにEC1 eVoやEC2 eVoを使っていて,とくに困ったこともないなら,わざわざ買い換える必要はないが,使い勝手のいい右手用マウスを探しているなら,試す価値があると筆者は思う。
これといった機能もないマウスに7700~8600円程度(※2014年5月20日現在)のコストを投じられるかというと,その金額を払える人はそう多くないかもしれないが。